友人宅

再発したガンが全身あちこちに転移して
杖をついて暮らしている友達から
ランチのご招待があった。

最初はお弁当にしようと言っていたのだけれど、
いったんは私が「山下のお好み焼き」(むっちゃ美味しい)を買っていくことになり、
そのうちに彼女が「私が作るから買ってこなくていい」と言い始めて、

えー、あんたが作るのぉ?

大丈夫かぁ?

……って、もちろん味のことだけどさ?

だって、あんたんちって、もう長いこと
ゴハン作るのは旦那の仕事になってるんだったよね~?

大丈夫。簡単で美味しいもの作るから。

てなメールのやりとりを経て、
何を食べさせられるのかと不安を抱えて行ってみたら、

超豪華でおしゃれなご馳走が並んでいた。

直前まで手伝ってくれていたという旦那は
気を利かせて姿をくらましていた。

なんでも、
近所のショッピング・モールに
しょぼい昼ごはんを食べに出かけていったとか。

おかげで女ふたりが
ワイン代わりのジンジャエール片手に美味しいランチを楽しみながら

しゃべった、しゃべった。いや~、しゃべった。

いっぱい人のワルクチ言って、
時々しんみりしたり、ゲラゲラ笑ったり、ノロケられたり。

これからの車椅子生活に備えて
全面改装したばかりのマンションの
広い窓から日がたっぷりと差し込んで、

良い午後でした。



      ===

ちなみに、この友人はこの人 ↓
魚の煮付け定食(2008/12/16)

この時のドライブは、彼女の最初の入院の直後だった。
余命2年とか言われていた。

この後、こいつは電話をかけてきて
「わたし旭山動物園に行きたい。マミさん、一緒に行かん?」とホザいた。

ばかたれ。そんなゼニがどこにあるか、と思ったんだけれど、
「余命2年」が頭に浮かんだので、仕方なく、私はインターネットでホテルと飛行機をとった。

で、こいつは動物園で
トリでもサルでもゴリラでもシロクマでもライオンでも檻の前で大声で呼ぶわ、話しかけるわ、
その自由奔放な振舞いで周りから顰蹙を買い(私はちょっと離れて無関係を装った)、

その後、小樽の町の横断歩道を渡りながら、

「わたしマッターホルンを見ながらコーヒーを飲んでみたい。
マミさん、一緒にスイスに行かん?」

またも平然とホザいた。

ばかたれ。
北海道までつき合わせておいて、
そんなゼニがどこにあるか、と思い、

「そんなもん。一人で行きんさい」と突っぱねてやった。

で、彼女はスイスへは行きそびれた。

今日、食器棚に、
あの時に小樽で買ったガラスのぐい飲みが置いてあった。