2014-01-01から1年間の記事一覧

2014年12月31日のメモ

知的障害、発達障害のある人が、医療関係者の無知・無理解によって適切な医療を受けることができていない問題をNYTが取り上げている。これ、私が最も興味のある問題のひとつ。英国でもメンキャップが知的障害のある人への医療差別を正すキャンペーンをやって…

Debbie Purdyさん、死去

2008年から自殺幇助をめぐる法律の明確化を求めて訴訟を起こし、 2010年のDPPガイドライン制定のきっかけを作った 英国のMS患者のDebbie Purdyさんが、12月23日に死去。 享年51。 訴訟当時に望んでいたスイスではなく、 英国のホスピスで、食べ物(栄養)を…

角田光代『ツリーハウス』

『ツリーハウス』角田光代 文春文庫 重厚な長編なんだけれど、 どうしても途中でやめられなくなって 出張先のホテルで2時まで読みふけった。 角田光代って、こんな小説を書く作家になってたんだ……。 角田光代に、こういう小説を書かせる時代なんだ……。 読ん…

障害のある我が子をケアし続ける「高齢親介護者」の実態調査(豪)

「親介護者」というと、一見「親を介護している人」と間違われそうだけれど、 「障害のある我が子を介護している親たち」のこと。 オーストラリアのシドニーで、 貧困、障害、病気などで苦しむ人々への地域支援で150年を越える歴史を持つ キリスト教系の団体…

2014年12月19日のメモ

WI大病院が障害者の肺炎治療を差し控え、一人が死亡(2009/5/20)で取り上げた訴訟の、上訴裁判決が出たので、判決文をざっと読んでみたんだけど、法解釈の議論がよく分からない。DRWの戦略ミスということなのか。訴訟の意図とはまったく別のところで、意思決…

『文藝別冊 佐野洋子』

『文藝別冊 佐野洋子 追悼総特集 100万回だってよみがえる』 昨日の朝のドカ雪の衝撃とあまりの冷え込みに ちょっと毒気を抜かれたみたいになって、 何の「やる気」も失せてしまったところへ、 さすがに今日は来ないだろうと思った宅配便がやってきて、 アマ…

スイスの「バイオ医療倫理学者」が幇助自殺者からの臓器提供を提唱

スイスのBasel 大学の、the Institute for Biomedical Ethics (バイオ医療倫理研究所)所属で、 英国の臓器提供倫理委員会のメンバーでもある、David Shaw医師が スイスの臓器提供率アップのために、 幇助自殺者からの臓器摘出を認めることや、 中央集約の…

医師登録を抹消された医師の診断書で英国人7人がスイスで自殺

英国の精神科医、Colin Brewer医師(73)が著書で明かしたところによると、 過去2年間に、患者7人に、 ディグニタスを含むスイスの自殺幇助機関で自殺するために必要な診断書を書いたが、 その中の一人がALSであったことを除くと、 (ALSのことを英語圏のメ…

80%のヤングアダルト・ケアラーが支援を受けていない(英国調査)

英国最大の介護者支援チャリティ、Carers Trustによる 14歳から25歳のヤングアダルト・ケアラーへ、初の大規模調査。 英国のヤングアダルト・ケアラーの総数は375000人。 295人のヤング・ケアラーへの調査から、 地方自治体による正式なケアラー・アセスメン…

蕎麦デートの日、「強いものの無自覚」を振り返った

先週の小雨の日、 県北に住む60代のBFと 某こだわりの蕎麦屋へドライブした。 確かに美味しい蕎麦だったけど、 そこの女将が、たいそうなおしゃべりで、 そっちの方が蕎麦よりもよほどインパクトがあった。 必然的に、帰りの車の中でも 「それにしても、まー…

カナダの「医師幇助死」合法化法案は障害者の安楽死も対象

カナダの2010年の自殺幇助合法化法案は 以下のエントリーで拾っているように否決されていますが、 カナダの議会でも自殺幇助合法化法案、9月に審議(2009/7/10) 図書館がDr. Death ワークショップへの場所提供を拒否(カナダ)(2009/9/24) カナダの議会で自殺…

2014年12月8日のメモ

Truogらが「無益な治療」論の「グレー・ゾーン」を考察する論文。 http://medicalfutility.blogspot.jp/2014/12/medical-futility-new-look-at-old-problem.html オランダでも、安楽死者からの臓器摘出ガイドラインが画策されている。 http://www.bioedge.or…

川島孝一郎「統合された全体としての在宅医療」:医学教育ではICFを教えない?!

施設は「生活の場」であるということが なかなか「医療」に(時に「看護」にまで)理解されず、 「病院と同じ考え方や姿勢の医療」が「病院における医師(医療職)の権威」で強行され、 施設が「病院でしかないところ」にされてしまいがちだ、という問題には…

知的障害者仕事体験週間・全国インクルージョン週間(英国)

知的障害者仕事体験週間(英国) 11月10日から16日まで、英国では「知的障害者仕事体験週間(Learning Disabilities Work Experience Week)」が開かれる。昨年に続き2回目。主催は、知的障害者チャリティであるメンキャップMencapと、インクルーシブ(包摂…

ドイツの生命倫理学者が提唱する商業的自殺幇助CAS:どうせ医師にもセーフガード機能果たせてないんだから、ショーバイにしたって違いはない

ドイツの生命倫理学者Roland KipkeがBioethics誌で commercially assisted suicide (CAS 商業的自殺幇助)を提唱。 医師が関与しない分、医療倫理に抵触しないし、 医師は思想信条によって拒否する場合があるが、商業的自殺幇助なら 自殺希望者にとっては医…

高谷清『嘔吐』

『嘔吐』高谷清著(近代文芸社 1988) あとがきによると、ここに収録された6篇の短編小説は 1980年と1981年に書かれたもの。 10月に読んだ『支子―障害児と家族の生』が1996年の出版だったから こちらは、ざっとその15年ほど前の高谷清先生の問題意識が 小説…

2014年11月20日のメモ

NJ州の下院議会、PAS合法化法案を可決。 http://www.dailyrecord.com/story/life/wellness/2014/11/14/new-jersey-assembly-passes-physician-assisted-suicide-bill/19012137/ http://www.mycentraljersey.com/story/news/local/new-jersey/2014/11/13/new-…

オランダ保健相が安楽死のガイドライン強化を提言

オランダの安楽死監督委員会のメンバーを9年間務め、 400件の安楽死の検証に携わった倫理学者、Theo Boer教授が 7月に英国上院議会で「オランダですべり坂は起きた。過ちを繰り返すな」と 証言したことについては、こちらのエントリーで取りまとめていますが…

C&Cで100人以上の餓死自殺(VSED)を手伝った70歳の看護師(NY)

Judith Schwartzさん(70)は 終末期医療を専門にするベテラン看護師。 オレゴンやワシントンのように医師による自殺幇助が合法ではないNY州で これまで100人以上にVESD(自発的飲食停止)による自殺を指導してきた。 最初にこの問題を考え始めたのは 親友が…

スイスのNeuchatel州、患者の自己決定ならナーシング・ホームでの自殺幇助を管理者に義務付け

スイス西部のNeuchatel州(フランス語圏)の議会を通過したのは、 州政府の資金が出ているナーシング・ホームに 自殺ほう助団体のExitの代表が自分たちのサービスを宣伝させるよう強制する州法。 ホーム経営者に思想信条による拒否権はなく、 患者が死ぬと決…

オレゴン州の「尊厳死法」20周年:1994年の投票結果

そういえば、どこかのニュースでチラ見したような記憶もあるけど、 先週、オレゴンの「尊厳死法」20周年だったらしい。 Thaddeus Popeがブログでデータを取り上げているので、 これを機に、情報として拾っておこうと思って。 オレゴン州の住民投票が行われた…

自殺幇助、賛否両方の立場が歩み寄れる中間点は「緩和ケアと本人が望む治療の保障」

この記事、著者2人の名前を見た瞬間にぶったまげた。 Arther Caplan と Wesley Smith!! どちらも拙ブログでは もう数え切れないほど発言を拾ってきたけれど、 Caplanはチョー有名で、 どちらかというと穏健な(最近は個人的にはちょっと?)生命倫理学者な…

インドの不妊手術キャンプで貧困層の女性が多数、死亡

ついさっき、以下の日本語ニュースを目にした。 避妊手術で10人死亡=5時間で80人施術か―インド 時事通信 2014年11月11日 とても悲しい。 いつかこういうことが起こると思っていた。 というか、たぶん、ずっと前から起こっていたんじゃないだろうか。 ただ、…

高齢者に「予防的自殺」の提言(米)

ブリタニー・メイナード事件をめぐる メディアの「死ぬ権利」騒ぎからいろんなものが出てきていて、 11月10日のメモでも拾ったように、 今度はCA州で肺がんの50代の女性がPASを求めていたりもするのだけれど、 NYTのご意見欄に、 高齢者には「予防的自殺」を…

中絶をめぐる「女性の決定権」論議から「母に殺させるな」の先へ

約一ヶ月前に某所で出生前遺伝子診断についての議論に加わり、 その際にも、中絶が「女性の決定権」なのだとすると、 じゃぁ「胎児の生存権」は否定されるじゃないか、という話が出て、 利光恵子さんの『受精卵診断と出生前診断―その導入をめぐる争いの現代…

『神も仏もありませぬ』佐野洋子

「神も仏もありませぬ」佐野洋子 筑摩書房 (ただし私が読んだのは2003年の初版単行本) 著者63歳から65歳、 北軽井沢に住み始めた頃のエッセイ。 この中の、 「フツーに死ぬ」という章が むちゃくちゃ良かった。 がんになった愛猫のフネの看取り体験を書い…

2014年11月10日のメモ

【ブリタニー・メイナード事件関連】 Brittany Maynardさんの幇助自殺についてBioEdgeのMichael Cookが勇気ある「オピニオン」を書いている。 Woman says she will die; woman says she won’t die; woman dies. How can anyone now be sure that Brittany di…

湯灌の儀式

「湯灌の儀式」なるものを初めて見た。 その丁重さに打たれた。 「慎んで○○させていただく」という言葉の精神が形ある動作になったらこうなる…… というものを見せられている、という感じがする。 男性の方が頭を担当。 女性の方が体を担当。 足を片方ずつ両…

A・ウーレット『生命倫理学と障害学の対話』刊行になりました。

【7日追追記】 この本を読んでくださる方へお願い。 ウーレットの本書での終末期に関する考えは、 本書刊行後にさらに変化しております。 それについては最後の「補論」にも書いておりますが、 今年、ウーレットはこの記事にTBしたエントリーで紹介した論文 …

「名優の自殺と『死ぬ権利』のダブルスタンダード」

先月号の『介護保険情報』の連載「世界の介護と医療の情報を読む」で書いた 「VSED(自発的飲食停止)」と「理性的自殺」こそ、 「死ぬ権利」運動の最先端で起こっている「自殺の勧め」と「自殺への支援」なのですが、 ブリタニー・メイナードさんの死は「医…