C&Cで100人以上の餓死自殺(VSED)を手伝った70歳の看護師(NY)

Judith Schwartzさん(70)は
終末期医療を専門にするベテラン看護師。

オレゴンやワシントンのように医師による自殺幇助が合法ではないNY州で
これまで100人以上にVESD(自発的飲食停止)による自殺を指導してきた。

最初にこの問題を考え始めたのは
親友が25年前に子宮がんになり、ほどこすべき手がなくなって
真剣に死を望んだ時だった。

点滴を外して飲食を停止するようアドバイスしたが、失敗し、
形成外科医が致死薬としてくれた薬もダメだった。
麻薬も試してみたが失敗。
最後には家族がまくらを顔に押し付けたのではないかと
今でもSchwartzさんは思っている。

当時、心理学と哲学のBAをとろうと倫理学を勉強しながら
死が抽象的概念でしかないことに不満を感じていた彼女は、
文献を検索して、古くからVSEDという方法は使われていたのだと知る。

BAをとってから就職した先が Compassion & Choiceだった。

東海岸のC&Cのカウンセラーの研修を担当し、2年前に退職。
その後はプライベートに患者さんたちの相談に乗っている。

最初に必ず、精神病、特にうつ病がないことと、
その人が確実に死に瀕していることを確認する。

「死ぬことについては選択の余地はないんです。
だから、この人たちは死ぬことを選択しているわけじゃないんです」

VSEDの方法を説明する時には患者さんの決断には影響しないように気をつけ、
VSEDの苦痛緩和はやらないホスピスもあるので、
やってくれるホスピスに紹介し、やってくれる医師や看護師の探し方をアドバイスする。

飢えはすぐに感じなくなるが、乾きは苦痛になることがあるので、
口腔ケアと薬で緩和する。だいたい10日くらいで亡くなることが多い。

家族間の意見の相違も多々あり、その調整をすることもある。

Hamline大学の法学教授のThaddeus Popeによれば、
本人の明瞭な意思による自己決定である限りにおいて、
ホスピスの患者がVSEDを選んだことで、
ホスピスが責任を問われることはないという。

「VSEDは合法です。ただ、合法ではないと広く思われています。
普通に行われていないことなので、偏見があるのです」とPope。

医療倫理学者の Timothy Kirkによると、
VSEDについて主要ホスピスと緩和ケア機関から
近く方針が発表されるとのこと。

これまでカトリック教会以外で
VSEDにはっきりと反対を表明した人はいない。

「VSEDは人類が死を早める最古の方法のはずです。
化学の知識も要らないし、毒イチゴを摘みに行ったりすることもいらない」

Kirkは将来的には医師がVSEDの苦痛緩和の最善の方法を学び、
また一人ひとりが死ぬまでにどのくらいかかるかも
正確に予測できるようになるだろう、と語る。

Shwartzさんは、終末期もいよいよ死に近づいてくれば、
食べ物は延命のための薬のようなものだという。

薬や致死薬の注射で死ぬのは自然ではないかもしれないが、
VSEDは自然な死に方だとShwartzさんは考えている。





ちなみに、この記事でも
ブリタニー・メイナード事件への言及がありますが、

メイナードさんにぴったりくっついて最後まで「支援」し、
問題のビデオ2本を作成発表したC&C(11月1日に死をアナウンスしたのも)については、

「ブリタニー・メイナードは死んだが、彼女の支援者たちは更なる犠牲者を探している」
というタイトルのこちらの記事に、


以下のように説明されています。

ヘムロック協会は1980年にDerek Humphryによって設立された。

ハンフリーは妻の自殺を手伝い、この問題で何冊かの本を書いた。
その本で悲劇的な自殺を遂げた人が出た。

……

ヘムロック協会は1989年にカリフォルニア州からオレゴン州に移り、
1994年にはオレゴン州で「尊厳死法」を確実なものとした。

2003年にヘムロック協会は名前を「終末期の選択」と変え、
2005年にはワシントン州のCompassion in Dying (死における共感)と合併して
C&Cを作った。

現在の本部はコロラド州にあり、
現在はカリフォルニア、コロラドコネチカットマサチューセッツ
ニュージャージー、モンタナ、ニューメキシコ各州で
PAS合法化に向けたキャンペーンを行っている。


さらに、この記事の一節。

Brittany’s suffering was real, and C&C capitalized on it to package her life and death neatly into soothing messaging points and a tear-jerking YouTube video that has over 11 million views. C&C’s goal? To try to move a nation toward accepting a “right” to commit suicide.

ブリタニーは実際に苦しんでいた。そしてC&Cはそれにつけこみ、彼女の生と死をこぎれいにラッピングしてスムーズにわかりやすい主張に仕立て上げて、お涙頂戴のユーチューブ・ビデオを作った。1100万回も再生されたあのビデオだ。C&Cの目的は? 自殺する「権利」を受け入れる方向へと、国中を動かそうとしたのだ。

Let’s not kid ourselves: no matter how much C&C wants to color the proposition with sentimentalism, suicide is as ugly in the form of a pill as it is through a gun to the head. If Brittany had decided to jump off a bridge, or shot herself instead of taking lethal pills, would that have made the result any different? Of course not. The direct act of killing oneself is still suicide. One method is just “cleaner” and “neater.”

きれいな話に流されずに考えてみよう。C&Cが自分たちの主張をどんなにセンチメンタリズムで塗りたくろうと、薬を飲んで自殺するのだって、頭を銃で撃って自殺するのと変わらず、自殺は醜い。もしブリタニーが薬を飲むのではなく、橋から飛び降りたり、銃で自分の体を撃っていたら、その結果がどこか違ったのだろうか。自分を自分で殺す直接的な行為は、依然として自殺である。方法によっては他ほどあたりが汚れず、見た目がきれいだというだけのことだ。


The ugly, inconvenient truth is that Brittany did not die from brain cancer. Yes, she was dying. But her cause of death was suicide by poison.

おぞましい、都合の悪い真実とは、ブリタニーは脳腫瘍で死んだわけではないということだ。確かに彼女は死にかけてはいた。しかし、彼女の死因は毒物による自殺である。


なお、こちらはメイナード事件で最も動揺しているのは緩和ケアの関係者だ、として、
緩和ケア関係者もメイナードさんのように感じる患者の気持ちは理解しており、
だからこそ、自宅で家族や友人に囲まれて、穏やかな死を支援できるよう、
メイナードさんのような選択をする人が出なくても済むように、
努力してきたのだと語るOR州の緩和ケア医の論考なのですが、


一つ気になるのは、
オレゴン州で「尊厳死法」が議論されていた1994年には反対の立場を取った
オレゴンホスピス協会も、20年後の今ではC&Cと協働関係にある、という下り。

2009年にこんな妙な情報がC&Cから出てきて、Wesley Smithが怒っていたんだけど ↓
オレゴンの自殺幇助ほぼ全員がホスピス・ケアを受けていた、という怪(2009/3/20)

なるほど、そういうことだったのか……。