読んだ(聴いた)もの
生権力、生政治、生資本という言葉に触れるようになって久しく、 ずいぶん前にアガンベンの『ホモ・サケル』とかネグリの『帝国』とか手にとってもみたけど、 いずれも、すぐにあえなく挫折。 小松美彦著『生権力の歴史』は 小松先生が言わんとしておられる…
『決められない患者たち』 Jerome Groopman & Pamela Hatzband著 堀内志奈訳 医学書院 2013 著者2人は夫婦で、ともに30年以上医療に携わってきた医師。 患者が医療をめぐる意思決定でどのような心理的なプロセスをたどるのか、 そこには患者のどのような人生…
スイスで医師幇助自殺遂げた夫に、妻の慙愧(英)(2018/11/18)のエントリーで紹介した 妻の手記を読んでみた。 以下、印象に残った箇所のメモ。 自分の家族に精神障害とアルコール依存の問題が様々あった。アイルランド系のカトリック。ただし、カトリックの…
10月14日のエントリーで紹介した A・Owenの訳書『生存する意識 植物状態の患者と対話する』を図書館で借りて読んだ。 Owenについては、10年前に興味を引かれて以来 ずっと目についた記事を拾い読みしてきたのだけれど、 その仕事の大筋については正しく追え…
『私で最後にして:ナチスの障害者虐殺と優生思想』 藤井克徳著 合同出版 アマゾンの内容紹介 「こんな死に方、わたしで最後にして」というガス室からのうめきは、今を生きる私たちへの真摯なメッセージです。ナチスは、「T4作戦」というかたちで、大量の障…
(前のエントリーからの続きです) 第5章は「家族の生活に表れるリスク―『問題のない家族』を演じることの矛盾」 ここで著者が考察しているのは、 家族はなぜ自分の負担感や葛藤を抑制せざるを得ないのか、という問い。 障害児のケアが全面的に母親に集中す…
(前のエントリーからの続きです) 第2章 第5節のタイトルは「ケアする母親」であることの強制。 調査の中で、ある母親から 「親にすべてがかかっている」という発言が出てくる。 そうした事態の深刻さは、母親自身以外には、障害児の関係者にすら共有されて…
(前のエントリーからの続きです) 序章と第1章「分析視角の設定」で明確にされているのは、 これまでの、主として身体障害者とその親を念頭に展開されてきた 母親を「差別者」とみなしたり、本人との対立関係で捉える視点への不同意。 例えば、 横塚晃一の…
藤原里佐『重度障害児家族の生活 -ケアする母親とジェンダー』(明石書店 2006) 著者は保育士、養護学校教員を経て、北星学園大学短期大学部助教授(刊行時)。 初読はいつだったのか、記憶が曖昧なのだけど、 2010年ごろじゃなかったかと思う。 3500円も…
相模原障害者殺傷事件 ―優生思想とヘイトクライム 立岩真也 杉田俊介 青土社 2016年12月22日 第1部は立岩氏が相模原障害者殺傷事件の後に 『現代思想』2016年9月、10月、12月号に寄稿した文章の再掲。 第2部は杉田氏が同10月号に寄稿した文章の再掲と 書いた…
(前のエントリーからの続きです) 2.歴史・社会・政治的背景との関連 欧米では 社会防衛思想に基づいた隔離収容主義で大側施設が作られ施設化が進んだが、 日本では 「親なき後」対策としての入所施設整備という社会的要請によって 70年代以降に入所施設…
「知的障害者の脱施設化の論点に関する文献的研究」 樽井康彦 大阪市立大学大学院生活科学研究科後期博士課程 生活科学研究誌 Vol.7, (2008) 《人間福祉分野》 Ⅰ. 近年のわが国における脱施設化施策の動向 2006年から段階的に施行された障害者自立支援法で…
広島大学の研究者の方の論文2本。 いずれも、知的障害者の福祉施策と「自立」をめぐって母親に焦点を当てた研究で、 相模原の事件からこちらの「脱施設」論に私が抱いている2つの主要な疑問点を それぞれ実証的に指摘するもの。 簡単に言えば、 「脱施設」…
イヴ・ジネスト、ロゼット・マレスコッティ著、本田美和子(監修) 『「ユマニチュード」という革命: なぜ、このケアで認知症高齢者と心が通うのか』(誠文堂新光社) ユマニチュードについては、 断片的に聞きかじるだけで詳細を知らないまま なんとなく「…
前のエントリーの続きです。 最首氏の「いのち」あるいは「いのち論」については、 こちらの言葉で取りまとめるということは、とうていできないので、 ご自身の言葉で語られている箇所を抜いておく。 ……木村敏の言い方を借りれば、「生きている」ことと、「…
ちょっと間が開きましたが、以下のエントリーの続きです。 高草木光一編『思想としての「医学概論」 ー いま「いのち」とどう向き合うか』 1(2016/10/20) 高草木光一編『思想としての「医学概論」 ー いま「いのち」とどう向き合うか』 2(2016/10/20) 訳あ…
訳あって、このところ「いのち」について考えている。 そんなさなかの先週、 娘の施設恒例の「日帰り旅行」に母娘で参加したところ、 こちらのブログでおなじみ海の愛しのHさんをはじめイケメン男性職員3人が 海を取り囲んで写真を撮ってくれる……ということ…
(前のエントリーからの続きです) なぜ、いま澤瀉『医学概論』なのか――。 これが、 高草木氏の論考「澤瀉久敬『医学概論』と三・一一後の思想的課題」のテーマだと思うので、 西洋思想史的な素養がないために読みきれないところはすっとばして、 分かる範囲…
高草木光一編 佐藤純一 山口研一郎 最首悟 『思想としての「医学概論」― いま「いのち」とどう向き合うか』(岩波書店 2013初刷、2015第5刷) 2012年度慶應義塾大学経済学部専門特殊科目「現代社会史」(春学期集中)での 著者4人の講義と、その後に行われた…
山本洋子『死に場所は誰が決めるの? EVウイルスT型悪性リンパ腫の夫を看取った妻の記録』(文芸社) 保健師だった知人の手記。 夫を看取った後でご自身のガンがわかり、 闘病しながら執筆し、校了の10日前に著者自身も亡くなった。 開示請求で取ったカルテと…
「重症心身障害児施設入所者の家族に終末期医療に対するアンケート調査を施行して(原著論文)」 浅野 一恵(小羊学園つばさ静岡), 山倉 慎二 日本重症心身障害学会誌 (1343-1439)38巻3号 Page455-461(2013.12) アブストラクトは 当施設に入所している重症心身…
(前のエントリーから続きます) そうして、私にはずっと気がかりだった 安楽死や医師幇助自殺に対する著者のスタンスは 最終第8章「勇気」で明らかになる。 人の死をコントロールできると示唆する見方に対して私は懐疑的である。今までは本当に死をコントロ…
(前のエントリーからの続きです) ウィスコンシン州のラ・クロッセ市は 事前指示書を書く人が増えて、終末期の医療費削減に成功した。 が、実際に重要なのは、形式としての事前指示書が書いてあることではなく、 同市の救急専門医、グレゴリー・トンプソン…
(前のエントリーからの続きです) 著者が丁寧に取材し、描いている何人かの高齢患者と家族の物語の一つが 老いた老年科医フェリックス・シルバーストーンと妻のベラ。 心臓発作とヘルニアの手術、胆石の手術、関節炎、脊椎の圧迫骨折、難聴を経ても 臨床を…
『死すべき定め - 死にゆく人に何ができるか』 アトゥール・ガワンデ 原井宏明訳 みすず書房 2016 Amazonの内容紹介は以下。 「豊かに死ぬ」ために必要なことを、私たちはこんなにも知らない 今日、医学は人類史上かつてないほど人の命を救えるようになった…
藤沢周平『三屋清左衛門残日録』(文春文庫) amazonの「内容」 日残りて昏るるに未だ遠し―。家督をゆずり、離れに起臥する隠居の身となった三屋清左衛門は、日録を記すことを自らに課した。世間から隔てられた寂寥感、老いた身を襲う悔恨。しかし、藩の執政…
前のエントリーからの続きです。 ② 佐々木千津子さんの事例 佐々木千津子さんについては多少のことは知っており、 これまでに以下のエントリーを書いているのですが、 佐々木千津子さんの強制不妊手術(2010/5/18) 佐々木千津子さんから山田嘉則氏のintegrity…
前のエントリーからの続きです。 本書の中心は、4人の女性への聞き取り調査。 ① 飯塚淳子さん(仮名) 全国的に1955年をピークに不妊手術は減っていくが、 宮城県では1965年をピークに1970年代まで続いた。 飯塚さんが手術を受けさせられた宮城県中央優生保…
利光恵子著/松原洋子監修 『戦後日本における女性障害者への強制的な不妊手術』 (立命館大学生存学研究センター 2016年3月) 詳細と購入はこちらから ⇒ http://www.arsvi.com/b2010/1603tk.htm 構成は、 戦後日本における優生施策の概要と分析と 3人…
矢吹文敏 『ねじれた輪ゴム =山形編=』 (生活福祉社 2014) 著者の矢吹さんは、日本自立生活センター所長で、 日本の障害者運動を牽引してこられた方。 インタビューがこちらに ↓ http://www.arsvi.com/2000/0908ts.htm 2月に京都の某所で初めてお目にか…