読んだ(聴いた)もの
前のエントリーの続きです。 そこで、前のエントリーの冒頭で書かれているように、 「障害とともに生きる人生についてのリアリティを十分かつ正確に認識した上で、 障害を持つ人々を意思決定の中心に置くために協力し合う」べく、 ウーレットは両者に対話を…
6日のエントリーに書いたような理由で、ここしばらく アリシア・ウーレットの『生命倫理学と障害学の対話』を何度目かに熟読しているので、 それについてシリーズで。 まず、このエントリーでは、序章から第2章までについて。 序章では、 ウーレットがこの本…
『どんぐりの会物語 地域で生きいきと生活する重症心身障害者』 (小国文男・どんぐりの会 クリエイツかもがわ) 京都南部の乙訓地域で 重症心身障害児と呼ばれる子どもたちの養護学校卒業後の日中活動の場を、と 1985年に親たちが「どんぐりの会」を立ち上…
天童荒太『包帯クラブ』(ちくま文庫) 宮地尚子『傷を愛せるか』で取り上げられていたので、 興味を引かれて読んでみた。 アマゾンの内容紹介 心の傷に包帯を巻こう。 関東のはずれの町に暮らす高校生、ワラ、ディノ、タンシオ、ギモ、テンポ、リスキ・・・…
宮地尚子『傷を愛せるか』(大月書店 2010) 記憶しておきたい箇所のメモのみ。 DV被害者は、配偶者から離れ、暴力から逃れられれば、それで幸せになれるというわけではない。被害者の自立とは、大きな損失の過程でもある。いままでの生活世界、人とのつながり…
原著論文 「NICU入院児の在宅移行を促進する「新生児特定集中治療室退院調整加算」の導入契機となった懇談会議事録の検証-在宅移行を見据えた議論の不足とその帰結について―」 今野大(立命館大学大学院先端総合学術研究科) 立命館人間科学研究,No.32,55…
海老原宏美・海老原けえ子『まぁ、空気でも吸って 人と社会:人工呼吸器の風がつなぐもの』(現代書館) 著者の一人、海老原宏美さんは、 以下の映画の、いわば「主役」の人工呼吸器ユーザー ↓ 【拡散希望】ドキュメンタリー映画「風は生きよという」 (風と…
『生を肯定する いのちの弁別にあらがうために』(青土社 2013) 小松美彦氏と、 香川知晶、市野川容孝、荒川迪生、金森修、小泉義之、片山容一各氏との対談。 第一章の香川氏との対談は本書のための録り下ろしで その他の章は『現代思想』その他で2006年か…
岸本英夫『死を見つめる心 ガンとたたかった十年間』(講談社 1964) 私が読んだのは上記ですが、 講談社文庫もあるようです。 Amazonの文庫版のページから ↓ 内容紹介 人間が死というものに直面したとき、どんなに心身がたぎり立ち、猛り狂うものか──すさま…
前のエントリーからの続きです。 この本を読みながら、勝村夫妻の体験と 私たち夫婦の体験が重なっていると感じることは他にもたくさんあるのだけれど、 私がこの本をどうしても読んでみたかったのは、なによりもまず、 入所施設で保護者が異議申し立ての声…
前のエントリーからの続きです。 理栄さんは次男の良司くんの出産後に、 管だらけの息子と初めて対面した時に気丈に涙をこらえたために 「母性が足りない」と判断され、教育的な意図で搾乳を続けるよう 指導され、辛い思いをしたという。 私も、海がNICUに入…
勝村久司『僕の「星の王子さま」へ』 (幻冬舎文庫 2004) 「医療情報の公開・開示を求める市民の会」世話人で、 現在も医療事故調査制度の問題点を鋭く指摘するなど、 医療事故や安全の問題を中心に 患者の立場から医療の壁に挑み続けておられる勝村久司さ…
加藤眞三『患者の力:患者学で見つけた医療の新しい姿』(春秋社 2015) これもまた、以下の本で考察されていた 「患者中心の医療」に向けた医療改革を医師が説く本。 松繁卓哉著『「患者中心の医療」という言説 患者の「知」の社会学』 1(2015/8/31) 松繁…
竹内整一『「かなしみ」の哲学 日本精神史の源をさぐる』 NHKBOOKS, 2009 こちらでエントリーにした『やまと言葉で哲学する』が初めてだったので、 この人のものをもう一冊読んでみたいと思って図書館で借りてきた本。 つまり、かぎりあることを「かなしむ」…
『やまと言葉で哲学する: 「おのずから」と「みずから」のあわいで』 竹内整一 春秋社 2012 われわれはしばしば、「今度、結婚することになりました」とか「就職することになりました」という言い方をするが、そうした表現には、いかに当人「みずから」の意…
前のエントリーからの続きです。 第6章「患者中心の医療」と「専門性」 終章 総括と展望 どちらかというと第6章のほうが結論めいて感じられたので、 ここは分けずに。 認識論的転回としての「患者中心の医療」の問題点として 著者が挙げているのは、 EBMにお…
前のエントリーからの続きです。 第4章 英国Expert Patients Programmeにおける患者の「専門性」 ……英国保健省とNHS(National Health Service:英国国民保健サービス)が主催するExpert Patients Programme (EPP)である。EPPは慢性的な症状を持つ人々が、そ…
前のエントリーからの続きです。 第1章「健康と病の社会学の誕生」 医療社会学の中から70年代になって「健康と病の社会学」が確立され、 生物医学への批判的分析によって、医療実践の政治性・社会性が明らかにされてきた。 ……先に挙げた「患者役割」「専門家…
前のエントリーからの続きです。 「患者中心の医療」が言われるようになってきたが、 その曖昧さに著者は冒頭、四つの疑問を呈している。 1. 「患者中心」とは具体的にどのような状態を示しているのか。 2. 「患者中心」を実現するために専門職従事者がなす…
「患者の知」はなぜ尊重されにくいのか……を、アトピー治療をめぐって考察する牛山論文で紹介されていた 松繁卓哉著『「患者中心の医療」という言説 患者の「知」の社会学』(立教大学出版会)。 前にbycometさんがブログで紹介しておられた時にも 興味を引か…
アトピー性皮膚炎治療における「脱ステロイド」をめぐって なぜ「患者の知」は医師から尊重されにくいのか、 本当の意味での「患者中心の医療」が実現するためには何が必要なのか、 両者の間にある溝を考察した、とても興味深い論文に遭遇したので、 現在、…
「地域医療ジャーナル」の2015年7月号臨時増刊 「EBMの父を偲んで」が出ました。 刊行の言葉は以下。 EBMの父といわれる、 David Sackett 師匠が2015年5月13日、 80歳で旅立たれました。 師匠がこれまで、 現代の医療に絶大な功績をもたらしてきたことは、 …
安藤泰至先生が書かれるものを読むたび、 印象は、だいたい、いつも同じで 「論理的なのに、しなやか」それから「懇切丁寧」。 時に「まろやか」とすら感じることがある。 今回のシノドスの論考も、まさにそういう感触。 「尊厳死」議論の手前で問われるべき…
6月6日のエントリーで紹介した 『患者から「早く死なせてほしい」と言われたらどうしますか? (本当に聞きたかった緩和ケアの講義)』(金原出版)の著者、 新城拓也先生が、圧倒的な内容のブログ記事を書いておられます。 私は上記の本を読ませてもらった時…
山口研一郎編著『国策と犠牲 原爆・原発 そして現代医療のゆくえ』 (社会評論社 2014) Amazonの内容 戦中、戦後、連綿と続けられてきた医療政策や科学技術が、国のほんの一握りの人たちにとって有意義である一方、多くの人びとに多大な被害や被災をもたら…
『患者から「早く死なせてほしい」と言われたらどうしますか?(本当に聞きたかった緩和ケアの講義)』 新城拓也 金原出版 著者の新城拓也医師については、エントリーこちらに↓ 新城拓也医師「現時点では医師による終末期の判定は占いの域」(2013/5/23) アマ…
堤未果『沈みゆく大国アメリカ』(集英社新書) アマゾンの内容紹介は、 アメリカ版・国民皆保険の呼び声高い「オバマケア」。 夢の医療保険制度改革は、「1%の超・富裕層」が仕掛けた、壮大なる「罠」だった! 史上最強の超大国をもゲーム上のコマとしてしまう…
図書館で目に付いたので借りてきて、読もうとしたのだけど、 翻訳文体というのがもともと苦手なこともあって、 どうしても「相性」がしっくり行かずに数ページで諦めた本。 『三人にひとり 生命の謎を説くがんと科学の未来』 アダム・ウィシャート著 北川知…
結城康博『孤独死のリアル』(講談社現代新書 2014) 個人的にメモしておきたい点のみ。 ① 55歳以上を対象とした内閣府の意識調査で 「治る見込みがない病気になった場合、最期はどこで迎えたいですか」との問いに、 半数以上が「自宅」と答えていることを論…
『神秘』(白石一文 毎日新聞社 2014) アマゾンの「内容紹介」 余命一年で知った、本当の人生―― 末期のすい臓がんで余命宣告を受けた53歳の出版社役員・菊池は、治療を放棄し、「病を癒す女」を探すため、神戸へ移り住む。 がんに侵されたのは、運命か必然か…