堤未果『沈みゆく大国アメリカ』




アマゾンの内容紹介は、

アメリカ版・国民皆保険の呼び声高い「オバマケア」。
夢の医療保険制度改革は、「1%の超・富裕層」が仕掛けた、壮大なる「罠」だった!

史上最強の超大国をもゲーム上のコマとしてしまう「1%の超・富裕層」は、これまでに、石油、農業、食、教育、金融の領域で、巨万の富を蓄積してきた。
恐るべきことに、次のターゲットは、人類の生存と幸福に直結する「医療」の分野だった――。

米国の医療費は総額2・8兆ドル(200兆円)。
製薬会社と保険会社、そしてウォール街が結託する「医産複合体」は、病気を抱えるもっとも弱い立場の人々をカモに、日々、天文学的な収益を上げつづけているのだ。

そして、その巨大な波は、太平洋を越えて日本に達しようとしている! !

本書は、稀代のアメリカ・ウォッチャーである著者が、完全崩壊した米国医療の実態とその背景を、入念な取材により炙り出した渾身のノンフィクションである。


自分自身のメモとして、ごく何箇所かのみ。


OR州の「尊厳死法」

当ブログでも拾っているオレゴン州のBarbara Wagnerさんの事例を紹介して、

 人生の終わり方を自分で選ぶ自由を与えるという崇高な目的をかかげて導入された、安楽死を許可する<尊厳死法>は、いつの間にかふくれあがる医療費に歯止めをかける、最大の免罪符になっていた。
(p.31)


ただし、OR州やWA州の「尊厳死法」が認めているは正確には
安楽死ではなく医師による自殺幇助。




アンディ・スラビット

オバマケア成立時にメディケア・メディケイド担当に任命されたのは
全米最大の保険会社ユナイテッド者の子会社オプタム社の元社員のアンディ・スラビット。
(p.150)


ティーブ・ラーセン

2012年に保健福祉省の顧客情報と保険担当ディレクターを辞任し、
そのままユナイテッド社の幹部となったのは、スティーブ・ラーセン。
ユナイテッド社はその後、オバマケア保険の大半に独占的に参入。
(p.150)

リズ・ファウラー

オバマケア法案を書いたリズ・ファウラーは、
全米最大の保険会社ウェルポイント社の社員時代の2001年、
医療関係法管轄の上院金融委員会に入り、メディケア処方薬法改正の設計に関与。

2年後に成立した同法は、政府からメディケアの薬価交渉権を奪い、
処方薬部分に民間保険会社が入り込む隙間を作った。

その後、ファウラーはウェルポイント社のロビイング部門副社長に。

数年後、上院金融委員会のマックス・ボーカス委員長直属の部下として
オバマケア法案の骨子の設計に関与し、 
日本やカナダをモデルとした <単一支払い医療制度>案を削除。

法案骨子の完成後、保健福祉省副長官になり、
オバマケアにおける 保険会社と加入者側それぞれの利益調整業務を任される。

その後、政府の要職を離れ、ビッグファーマJ&J社の政府・政策担当重役に。
(p.150-152)


チャータースクール

……オバマケアで医療従事者に予算削減競争をさせたのと同じ手法で、政府は学力テストを義務化し、点数を競わせ、敗者には予算カットや学校の統廃合、廃校という罰を与える。予算カットで経営が悪化した公立学校は教員の非正規化を進め、教職員組合は次々に解体されていった。……

       (中略)

 廃校となった学校の跡に新設された民間経営のチャータースクールは、新しい投資商品として投資家たちに差し出され、学校の株式会社経営というウォール街の「新商品」が飛ぶように売れ始める。
(p.176-177)




日本の「ヘルスケアリート」

 2014年10月1日。ついに日本でも東京証券取引所で国内初の「ヘルスケアリート」が承認された。上場予定は11月5日。医療・介護への営利参入を掲げる政府の「成長戦略」による強力な後押しの成果だ。今後は自治体病院などにも対象を広げてゆく方針だ。全国的にこうした施設が財政難に苦しむここ日本で、「頑張っている医療・介護施設に安定した資金調達を」といううたい文句は魅力的だろう。
 しかし忘れてはならないことは、リートは福祉ではなく、あくまでも金融商品だということだ。人員配置や料金設定、サービスの質などは、すべて利益拡大という目的に沿って決定されてゆく。思うように利益が出ずに配当が下回れば、人件費カットや利用料値上げ、最悪の場合売却され、施設自体廃止されてしまう。……
(p.188-189)


思い出すのは、ワクチン債