今度は「ペースメーカーのスイッチを切る」患者の自己決定が問題に

去年もこんなニュースを拾っていますが、



心臓のペースメーカーや除細動器を入れたりつけたりしている人が
もともとの心臓病や別の病気から非常に重篤な状態になった場合に、
それらのスイッチを切ることを巡って
事前指示書を書いていないために親族が判断するしかなくなる、
という事態が出てきている。

過去4年間にそれらのスイッチを切りたいと要望があった
Mayo Clinicの150人の患者の記録を調査した結果が報告されている。

大半は白人男性で高齢、
心臓病のほかにがんや呼吸器、神経系の病気を併発して非常に重く、
事前指示書がないために家族が要望したというケースが半数に上る。

The Heart Rhythm Society その他の医療団体からは患者や代理決定者の意思を尊重して
スイッチを切ることは法的にも倫理的にもOKとのコンセンサスが出ているものの、

2008年のThe Heart Rhythm Society 会員と製造企業の代表への調査では
11パーセントがペースメーカーのスイッチを切るのは安楽死だと考えていた。

実際、上記のMayoの患者の中にも、
スイッチを切ってほしいと要望したものの医師に断られて
他の医師を見つけたり倫理コンサルテーションが実現する前に亡くなった人が2人いる。

患者の中にはスイッチを切れることそのものを知らない人もいるが
現状ではスイッチを切って穏やかな死を迎えるには
患者が主導するほかなく、事前指示書やPOLSTを用意しておくことが望ましいし、

こうした医療に携わる医師は
埋め込み技術だけでなく、フォローアップの受診時や
電池交換の再手術が必要となった際などに
患者が将来どうしたいと考えているか、について
話し合いをするすべも身につけておくべきである、と。

例えば、今回の論文の著者の一人、John Mandrola医師が考案した簡単な台詞では
以下のように話してはどうか、と。

I don’t want to be morbid, but I just want to remind you that you have control here. We can turn the device off at any time. (It is your device and your life.)

あんまり暗い話をしてもどうかとは思いますが、
これは自分で決められることだとお話しておきたいものですから。

ペースメーカー(除細動器)のスイッチはいつでも切ることができるんですよ。
あなたのペースメーカー(除細動器)、あなたの命ですからね。


が、もう一人の著者に言わせれば、現実には多くの医師がこんなことは言えない。
むしろ「機器の調子はいいですね。では1年後に」の方が、言いやすい、と。




すごく気になるのは、
記事に寄せられたコメントを読むと、

知的障害のある人や認知症の人へのペースメーカー利用は、
そもそもの埋め込み段階で慎重に考えるべきでは、といった声が上がってきていること。



同ジャーナルの論説はこれ ↓
https://archinte.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1783299