ベルギーの重病の子どもたちの願いは「まだ人間でいる間に死なせて」?

ベルギー議会が子どもの安楽死を認める法案を可決したことについては
以下のエントリーでお知らせしましたが、



某MLでいただいたBBCの記事とビデオ。



このビデオに出てくるお医者さんが言っているtheyというのが
たぶん、今回の法改正で対象となる不治の病の子どもたち
なんだろうと思うのだけれど、

そういう子どもたちが
「ひどい死に方をさせないで(ここのところ聞き取り?)。
その前に、自分がまだ人間でいる間に、まだ尊厳がある間に死なせて」
と言って頼むんだって、このお医者さんは言っている。

ある状態になったらもう「人間でいる」とはいえない状態なのだとか
「尊厳がない」んだという価値意識を、

そういう重い病気の子どもたちに
植え付けてしまったのは誰なんでしょうか。

そういう「お願い」をする子どもたちに対して
どうして医師はその不安や恐怖を正面から受け止めてあげられないのか。

どうして「痛くないよう、苦しくないよう、怖くないようにするから」と
約束してあげることができないのか。

ちなみに、
日本の小児科医、細谷亮太医師の
病気の子どもへの話の3大原則は
「うそをつかない、わかりやすく、あとのことも考えて」。

細谷医師は、ある少女に病状の説明をした後で
「最後まで痛くなく苦しくなくするという約束だけは絶対に守るからね。
怖いことのないように頑張るから、よろしくね」と
付け加えている。



重い病気に苦しむ子どもたちが周囲の大人たちから
「あなたはこれ以上重症になったら人間ではなくなる」とか
「死ぬ前にあなたは尊厳を失った状態になる」というメッセージを
送られ続けているのだとしたら、

それこそが、とても残酷なことなのでは。


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法文の要件の一つは

The child must “be in a hopeless medical situation of constant and unbearable suffering that cannot be eased and which will cause death in the short-term”.

その子どもは「緩和することのできない耐え難い苦痛が常時あり、短期間のうちに死に至ることとなる、望みのない病状にある」こと。


上のBBCのビデオにあった医師の
「まだ人間でいるうちに」「まだ尊厳があるうちに」という表現には
この要件をはみ出した状態の子どももイメージされている可能性は
本当にないだろうか。


ついでに、この記事に引用された法文の要件に関する箇所を以下に。

Mahoux had called for widening his law to include minors because medics had already helped children in pain die as a question of mercy - just illegally. The draft bill had stated that a child must have "a capacity of discernment and be conscious" on requesting to die.

The law also requires counseling by doctors and a psychiatrist or psychologist, as well as the approval of the child's parents.