現行法でのPAS合法性を訴え、ALS患者や医師らがNY州最高裁に提訴

昨日4日、NY州裁判所に
医師幇助自殺(PAS)は現行法に照らしても合法であるとの宣言を求める
訴訟が起こされた。

提訴したのは、
ALS患者のSara Myersさんを含めた患者3人と、
1990年代からPAS合法化を求めてきたTimothy E. Quill医師を含む医師4人、
看護師1人と、そして、合法化ロビー団体のEnd of Life Chices New York.

その主張するところは、NYTの記事によると、

自殺幇助を禁じる法の精神とは、
例えば、失恋したティーンエイジが自殺するのを幇助してはならない、ということであり、
決定能力のある終末期の患者が死ぬのを医師が手助けしてはならないというものではない。

また、医師は既に状況によっては、例えば生命維持を取り外すなどして
終末期の患者が死ぬのを幇助することが許されているのだから、
それ以外の終末期の患者の死を早めることはできないという事実は、
NY州憲法の平等な保護条項に違反している。

この訴訟の主任弁護士のKathryn L. Tuchkerさんは
Disability Rights Legal Center(障害者の権利法律センター)のExecutive director.。

反対の声として拾われているのは、
NY州カトリック会議のディレクターのKathleen M. Gallagherさんで、
自然死をさせることと意図的に死を早めることの間には
道徳的、医学的、法的に違いがあるという点と、
PAS合法化は癒す人としての医師の役割を変えてしまい、
最終的には最も安上がりな選択肢として利用されることになる、という点を指摘。

シラキュース大の生命倫理学者、Samuel Gorovitzは、
法改正よりもこちらの方が簡単に法回避できると考えたのでは、と推測。

Gorovitz教授はNY州の生命と法に関する委員会に参加し、
1994年のレポートで法は改正されるべきではないと結論付けたが、
その後の各州での出来事や他国の経験にかんがみて、
また医療の進歩をかんがみても、見直しの時期かもしれない、とも。

Mayersさんは
「選択があるということは、それを使わなくてすむということ」

Quill医師はロチェスター大学医療センターの緩和ケアの責任者で、
1991年に白血病の患者に致死量の睡眠薬を処方したことを論文発表し、
憲法を根拠にNY州のPAS合法判決を求めた訴訟は連邦最高裁で1997年に却下された。

最近、がんが進行して骨が破壊されていく病状の患者さんが
自発的に飲食を断った際には「死ぬのに10日かかりました。
(VSEDには)驚くほどの自制心も必要となります」

PAS合法化法案を準備中のNY州上院議員Brad Hoylman氏は、
きっかけはブリタニー・メイナードさんだった、と。



Quill医師に関しては、

1991年のNYTのOpinion記事はこちら ↓
http://www.nytimes.com/1991/03/17/opinion/dealing-death-or-mercy.html

2012年にFENやC&Cの活動を追いかけた
米のTV番組”the Suicide Plan”にも登場して、
終末期の人に限定すべきだと語ると同時に、
素人による危険な闇の安楽死がはびこることを案じている ↓
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/65805049.html

Quill医師はブリタニー事件でも発言しており、
全米でPASは密かに行われていると話している ↓
http://guardianlv.com/2014/10/assisted-suicide-an-underground-practice/#EGkLtHJRKcXfsxhr.99

ただ、たいていの患者では
医師が背を向けて自分を見捨てることはないと感じれば、それだけで十分だとも語って、
必ずしも合法化の必要には踏み込んでいない。



この提訴の論理、
モンタナ州最高裁のPAS合法判決にとても似ている。

モンタナ州最高裁も、
消極的安楽死と積極的安楽死には差がないとして
現行法のままで合法性を認めた。

その判決については、
介護保険情報』2010年2月号の連載で簡単に取りまとめています ↓
http://www.arsvi.com/2010/1002km.htm