日本病院会が「認知症者も高齢者も重症ならみんな自然死で」 次の狙いは神経難病と重症心身障害者?

日本病院会、延命中止で6事例 終末期医療、家族に提案」とか
「延命措置続けますか 家族が問われる想定6例示す」というニュースが流れているのだけど、
http://www.kyoto-np.co.jp/environment/article/20150527000154
http://www.asahi.com/articles/ASH5W5R1KH5WULBJ00X.html

記事が短いものばかりなので、検索してみたら、

日本病院会は4月24日付けで
「「尊厳死」-人のやすらかな自然の死についての考察」という文書を出していた。
https://www.hospital.or.jp/pdf/06_20150424_01.pdf

読んで、びっくり。

尊厳死法制化がなかなか思うように行かないものだから
そっちは諦めて病院会の倫理委の「考察」でもって、
「終末期」と「自己決定」がキモの尊厳死法案の枠組みをハデに飛び越えて
「高齢」「意思疎通ができない」「回復の見込みがない」基準によって
(ということは、つまるところ「QOLの低い生は医療に値しない」基準
というか、曖昧で何もかもグダグダの「どうせ」という偏見基準によって)
医療の引き上げを進めていこうという話。

まるで
正面から憲法を改正するのはなかなか難しいものだから、
安全保障関連法案という姑息な手段でもって、
いかようにも解釈次第、時の政権次第の法改正を
勢いだけでやっちまおうという話みたいに――。

全文を以下に。

尊厳死」-人のやすらかな自然の死についての考察―の公表について

終末期の医療については、厚生労働省の「人生の最終段階における医療の決定のプロセスに関するガイドライン(平成19年5月(改訂平成27年3月))や各種関係団体からのガイドライン等が示され、昨年は尊厳死に関する法律化の動きもありました。近年、終末期医療に関する訴訟案件はほとんど見られないようになりましたが、医療の現場では胃瘻の設置や延命治療の是非等、医療従事者として取るべき方法に困惑する場面もあると考えます。日本病院会では倫理綱領を定めており、その中で「5.我々は人の自然な死に思いをいたし、緩和医療を推進し、誰もが受容しうる終末期医療を目指す」としておりますが、倫理委員会ではその議論をさらに深め、この度、いわゆる「尊厳死」に関する考察としてし、別添の「尊厳死」-人のやすらかな自然の死についての考察―をまとめました。日本の皆保険制度により達成された長寿社会において、我々がいかに患者本人並びに家族にとって満足のできる医療の提供ができるかの一助となればと考え、ここに公表いたします。

一般社団法人日本病院会
会 長 堺 常 雄

倫理委員会
委員長 松本 純夫


尊厳死」― 人のやすらかな自然な死についての考察 ―

一般社団法人日本病院会 倫理委員会

【前文】

死は避けることのできないものと誰しもが理解しています。
日本の皆保険制度により達成された長寿社会は死が自分たちからは遠い出来事のように国民に思わせる現代社会を作り出しました。そのため自分や家族には死は縁のないものと楽観している人も多く、それが日本の医療現場にきしみをもたらしている原因の一つとも考えられます。
また、認知症が進み周囲と意思の疎通もなく寝たきりの高齢者も増えています。それらの方が重篤な心血管・脳血管障害、悪性疾患などを患われたとき、そして本人の意思確認をとることが難しいときの医療者のとるべき対応について議論すべきときが来ているように思えます。

昨今、「尊厳死」という言葉がよく聞かれるようになりましたが、医療の現場における「終末期」の医療行為について、この尊厳死安楽死が混同され、誤解を招く場合があります。
医療者として最善と考えて行った行為が訴訟案件になることもあります。 そこで、終末期に関する医療については、厚生労働省日本医師会、その他学会等がガイドラインを示しており、近年では訴訟案件がほとんど見られないようになり、ある程度の共通認識が得られていると考えます。

このような状況の下で、昨年は「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法案」が尊厳死法制化を考える議員連盟から出されようとされ、終末期医療をめぐる問題が再燃しました。

当委員会では日本尊厳死協会、医療に詳しい弁護士、元公証人、大学教授、医療現場の医師を招聘して意見交換等を行いました。その結果、「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法案」は医師を対象として延命治療の不開始または中止をする際は二人以上の医師が判定を行い、このルールに従えば民事・刑事・行政上の免責となるという内容ですが、現状でこのような法律が必要なのかという疑問があります。

我々医療を提供する側から考えると、このような法律の設置を望むことより、回復の可能性が無く、かつ死期が間近となった終末期の患者さんに対し、いかに満足される医療の提供ができるかを考え、国民が受容できる方策を検討することが一番重要なことと考えます。

【委員会におけるコンセンサス】

・ 「尊厳死」とは、自分が不治かつ末期の病態になった時、自分の意思により無意味な延命措置を差し控えまたは中止し、人間としての尊厳を保ちながら死を迎えること。

・ 「積極的安楽死」とは、積極的な方法で死期を早めることで、医学的介入による積極的
安楽死は容認できない。

・ 公証人による「尊厳死宣言公正証書」、日本尊厳死協会のリビングウィル等は、尊厳ある自分の死の意思表示として有効な手段である。

臓器移植法は死亡後の臓器の扱いを定めた法律であるため脳死等「死亡」の判定であるが、尊厳死は患者の意思による「死に方」の問題なので根本的に異なる。

・ 医療の現場における終末期の判定は、複数職種による医療チームで行う。

・ 疾病等により本人の意思が確認出来ないときは、家族などから得られる患者本人の推定意思を尊重し、医療・ケアチームにより患者にとって最善の治療方法をとることを基本とする。

尊厳死に関する議員立法(案)は、この条項に従えば民事上、刑事上、行政上の責任を問われない(免責)とされているが、国民から全面的な理解を得られない可能性がありさらに議論を進める余地がある。

・ 癌等の亜急性期における終末期医療については、緩和医療の推進を考える。

アルツハイマー病などの認知症の患者における終末期については見極めが困難。

延命について以下の例のような場合、現在の医療では根治できないと医療チームが判断したときは、患者に苦痛を与えない最善の選択を家族あるいは関係者に説明し、提案する。

     ア)高齢で寝たきりで認知症が進み、周囲と意志の疎通がとれないとき
     イ)高齢で自力で経口摂取が不能になったとき
     ウ)胃瘻造設されたが経口摂取への回復もなく意思の疎通がとれないとき
     エ)高齢で誤飲に伴う肺炎で意識もなく回復が難しいとき
     オ)癌末期で生命延長を望める有効な治療法がないと判断されるとき
     カ)脳血管障害で意識の回復が望めないとき

・ 下記の事例はさらに難しい問題で、今回は議論されなかった。
     ア)神経難病
     イ)重症心身障害者

・ その他


【委員会のまとめ】
議論のサマリーとして以下の3つ結語を提案します。

1.現在の長寿社会において、元気なときに本人が意思を示す意見書が必要であるとする意見もあります。強制するものではありませんが、望ましいものとして医療の現場での困惑を解決する意味からも「自分の終末期医療」に対する意思表示について国民全体による議論と理解が必要と考えます。
健康寿命年齢(男性で70歳、女性で71歳)に達する3~5年前に、自分の安らかで自然な死についての意見書を記載して意思表示を記録として残しておくのも良い方法です。

2.癌の終末期においては、緩和医療の推進を図る体制や教育等の整備が急務であります。求められるものとして、下記を提案します。

① 患者本人の意思の尊重
② 除痛、spiritual careの深化
③ 患者および家族・関係者のグリーフケア推進を図る
④ 医学部における緩和ケアのカリキュラム化

3.認知症の終末期においては病状が多彩で予後の見極めが難しく、国民的な議論が必要となります。 胃瘻による栄養管理、人工呼吸器による呼吸循環管理の是非など、医療レベルでは判断できない人のやすらかな自然な死について、国民的コンセンサが求められます。

人間にとって避けられない「死」、その最後の瞬間に立ち会うのも我々医療者です。免責の法律やガイドライン等は参考になりますが、臨床の場ではケースバイケースで対処しなければなりません。

人の自然な死に思いをいたす時、ことさらに過大な医療が必要なのかと自省する自分がいます。生きているだけで良い、其れこそが人命尊重だとする意見もあります。一方、高齢社会を迎えて健康寿命から実寿命の終焉までの時間のQOLを重要視することも大切です。また、それらの高齢者にかかる医療費は毎年増大しています。社会保障の持続性が財政との関連で議論されるとき、必ず伸び続ける高齢者の医療費を支える世代間格差が問題になり、議論の終点が見えません。世界に先駆けて高齢化社会となった日本において、健康寿命と実寿命との期間の延長が皆保険制度の結果として生じ、重要な社会問題となっています。

「人の安らかな自然な死」について国民的コンセンサスを醸成していくことが「尊厳死」に対する一つの回答となり、世界に向けて発信できると期待します。

【付帯事項】
当委員会の検討において、結論には至りませんでしたが重要な事項であり、今後議論されるべき事項を付帯事項として列挙します。

・ 医学部あるいは医療にかかわる教育施設での終末期医療にかかわる教育の充実
・ 病院や施設の外、在宅における緩和医療の充実
・ 患者および家族・関係者の終末期におけるグリーフケア・満足度向上への取り組みと議論
・ 病院・医療従事者にとって対応不可能な要求をする家族や関係者が増加している現状の改善
・ 持続可能な社会保障制度のあり方
・ 年金や社会保証を支える世代の応分の負担の姿
・ その他

【倫理委員会委員】
委 員 長 松本 純夫 国立病院機構東京医療センター 名誉院長
副委員長 福井 次矢 聖路加国際病院 院長
委  員 高久 史麿 日本医学会 会長
〃 北島 政樹 国際医療福祉大学 学長
〃  寺野 彰      独協医科大学 理事長
森岡 恭彦 日本赤十字社医療センター 名誉院長
特別委員    児玉 安司  新星総合法律事務所 弁護士
〃   岩尾總一郎  一般社団法人日本尊厳死協会 理事長

平成27年 4月24日
(ゴチックはspitzibara。文字の配列が原文どおりになっていない箇所もあります)



ゴチックにしてみた箇所、
最後の辺りにある ア)からカ)が
今日のニュースにある6例のことと思われます。

そして、ついに来た。

ゴチックにした箇所の最後のところ、
この人たち、次には神経難病患者と重症心身障害者を狙ってる……。