久しぶりに素敵なお医者さんに遭遇

娘でも夫でもない家族にある処置が必要となり、
ある総合病院に入院したところ、

主治医の説明が素晴らしかった。

まず、イントロダクションとして
その処置を含む治療の選択肢の全体像を

どういう方法や技術があるか、
それぞれの利点とデメリットがなんであるか
箇条書きで素人にもわかりやすく、さっと。

そして、今回の処置がその中でどういう位置づけのもので、
どういう際に必要となる選択肢であるか。

その利点とデメリットの再確認。
デメリットが出た場合の対応策の選択肢について。

次に、当該の病人の状態について。
総体的な身体状況、特定部位の問題、
これまでに行われた治療と現状、今回の処置を試みる理由。

それによって今後の展望がどうなるか。
今後、可能な選択肢と、それに対する先生の考え。

次に、では具体的にこのたびの処置がどのようなものになるのか。

ここでは実物と模型が出てきて、それを使いながら、
手術では何が行われるかが説明される。

つい最近、末期がんの兄が同じ処置を受けておりました、と話すと、
末期がんの場合と寝たきりの高齢者の場合では何が違うのかを、さらっと。

使い勝手に関する兄の感想などもお話しして、
あぁ、それはこういうことだろうね、などと、しばし解説もしていただく。

「じゃぁ、どういうものか、あらましはご存じなんですね。ちょっと触ってみます?」

実物を渡してもらい、
自分でさわってみながら、細部の仕組みも説明を受ける。

その後、術後に起こりうるトラブルのリスクについて
これもまた、それに対する対処方法とともに箇条書きで。

当該の病人については、どのリスクが高いと考えているか。
それへの対応はこれこれと考えていること。

最後に、私が、
「病人は一見すると何もわかっていないように見えてしまうのですが、
案外によく分かっていて、話しかけるとかすかにうなずいたり
眉間にしわを寄せたりして意思表示もできます。

やっぱり本人は不安だと思いますので、先生、すみませんが、
処置の際には本人にその都度、何をするかを説明してやっていただけないでしょうか」

「なるほど、そりゃあ、そうだよね。
いきなり別の病院に環境が変わって、そりゃ、それだけでも不安だよね」

そして、説明が終わると、さっと出ていかれたと思うや、
病人の病室へ直行。

ふいを突かれて後れを取った私が病室へ入った時には
寝たきりの病人の上にぐっと体を折り曲げて、
顔のすぐそばで、ちょっと大きめの声で、
でも自然な口調で語りかけておられました。

「○○さん、主治医の○○です。
これから、ここに、これこれこういうことのために、
これこれこういうことをするんだけど、
できるだけ痛くないようにやるからね。
だいじょうぶだからね」

そして、手術室から病室に戻ってきた時にも
手術着のまま付き添ってきてくださって、

私が「おかえり。がんばったね」と声をかけて
病人がかすかにうなずくのを目ざとく見て取られ、

「ああ、やっぱりご家族には反応されますね。
さっき話しかけても僕には反応してくれなかったけど」と苦笑。

こういうことをちゃんと観察してくれる医師は少ない。

他のスタッフといっしょに
ベッドの上に上がり込んで病人の移乗を済ませてから、

首尾について、気になることについて、
また簡潔に説明してくださった後で、
さっと消えていかれました。

もー、惚れそーでした♡♡♡