オランダで認知症の女性に医師が睡眠薬を盛り、死にたくないと抵抗されると家族に押さえつけさせて安楽死

女性は80歳以上で、ナーシングホームで暮らしており、
以前、自分がしかるべき時が来たと思ったら安楽死したいという意思を表明していた。

症状が悪化し、不穏や怒りなどを頻繁に見せるようになり、
また夜間に徘徊も見られたため、

ナーシングホームの女性医師が、
本人は自分ではもう判断できないが耐え難い苦痛を感じているとし、
今がもう「しかるべき時」だと考えて、安楽死を決めた。

直前にも本人は死にたくないと語っていたが、
医師はこっそり女性のコーヒーに睡眠薬を入れて飲ませた。

眠った女性に致死薬を注射しようとしたところで女性に気づかれ、
死にたくないと激しく抵抗されると、家族に押さえつけさせて注射。

ところが、安楽死検証委員会は、
睡眠薬を飲ませた点、抵抗されても中止しなかった点で、
女性医師が「一線を越えた」ことを認めつつ、
善意でやったこと(in good faith)として罪には問わない模様。
(現在はまだ検証委員会の報告を受けて、法務法と保健相が書類審査中らしい)

また、認知症の人への安楽死における意思の権限の明確化が必要、
そのためにはこのケースは裁判にした方がよい、との認識でもあるんだとか。

オランダでは現在、75歳以上の高齢者を安楽死の対象とすべく
法改正が検討されており、

その法案では、
医師だけでなく看護師、心理学者、心理セラピストが
life-ending consultantとして最低2回面談して安楽死を承認できる仕組みも。








たちまち気になるのは、2点で、

まず、善意による行為だったかどうかということと、
安楽死をさせる医師のやり方が法律の規定を逸脱していることとは別問題だろう、ということ。

この委員会の姿勢では、
悪意さえなければ医師は死にたくないと言っている人間を殺してもいい、
ということにはならないんだろうか。

もう一つは、安楽死検証委員会の委員が、
医師はなすべきことをやった(did what she had to do)という表現を使っていること。

それは認知症の高齢者が不穏になったり徘徊しているなら、
本人はたとえ死にたくないと言っているとしても、
医師は安楽死を決断し実行すべきだ、ということ?


【4日追記】
今日のBioEdgeがこの話題を取り上げており、
英国の報道が「委員会は無罪放免に」としているのに対して、
BioEgeは「委員会は非難」と書いているなど、ニュアンスが若干異なっています。

それを受けて上記記事を確認し、上記の記述を何点か修正しました。

BioEdgeによると、
安楽死検証委員会は、上記の逸脱2点の他、もう一点、
女性の事前指示は医師の行為を正当化するだけ明瞭ではない、という問題も指摘。

委員会の結論としては、
認知症の人への安楽死における医師の権限の明確化のためには
訴訟に持ち込むべきだ、というもの。

それから、BioEdgeの記事によると、
女性が事前に表明していた意思は
自分がしかるべき時が来たと思った時に安楽死したいというほかに、
認知症の人のためのナーシング・ホームには入りたくない、というものもあったとのこと。

なお、BioEdgeの記事によると、
これまでのオランダの認知症の人の安楽死に関する判決には以下のものがある、とのこと。
週末とて、訳す余裕がないので、取り急ぎコピペ。

Verdict 2016-18, for instance, involved a very cranky man with early Alzheimer’s. The dementia clause in his advance directive was hand-written. By him? It is not clear how the doctors established that it was by his own hand. But they saw “no reasonable alternative”.

Verdict 2014-28 involved a man in his 50s who had suffered from burn-out for 20 years, with recurrent depression. He was gloomy, had problems with his eyesight and was increasingly dependent. He asked his doctor and his psychiatrist for euthanasia and they refused. He then applied to the Levenseindekliniek (end of life clinic) and their staff signed all the papers and euthanised him.



【9月30日追記】
続報。オランダで委員会が調査に入る初のケースに。
http://www.mirror.co.uk/news/uk-news/euthanasia-doctor-told-family-drugged-11258482