森達也『「自分の子どもが殺されても同じことを言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい』



2007年10月から
ダイヤモンド社のPR誌『経』に森氏が書いている連載
『リアル共同幻想論』をベースに手を入れたもの。


 不安と恐怖を抱え込んだ社会は、集団化や結束を自同律のように求め始める。これは群れて生きることを選択した人類の本能だ。そして九・一一後のアメリカが示すように、集団はその内圧を高めれば高めるほど、外部の敵を探したくなる。内部の異物を見つけたくなる。攻撃して排除したくなる。さらに集団内部の同調圧力が強くなることで、全体と違う動きがしづらくなる。誰かが走れば自分も走りたくなる。
 こうして集団は、足並みをそろえて暴走する。人類の歴史は、そんな過ちの繰り返しだ。
(p. 249)


 ビッグ・ブラザーはメタファーだ。多くの人の幻想によって存在を裏付けられ、補強され、正当性を与えられる。実在しない権威に支配される国民は「見守られて安心できる」とつぶやきながら相互監視体制を強化し、自らの自由や権利を自ら抑圧して制限している。
(p. 289)


それから、第5章の、2010年11月20日
「元皇軍兵士の証言 日本軍は中国で何をしたのか」でレポートされている
『撫順の奇蹟を受け継ぐ会』のシンポにおける
絵鳩毅さんの証言が、

まるで映像で見たみたいにくっきりと
頭に刻印されてしまった。

それは、こちらで絵鳩さんが書かれている長文の手記にある、
「人間地雷探知機」と「実的刺突」などのこと ↓
http://www.ne.jp/asahi/tyuukiren/web-site/backnumber/01/ebato_taiken_hansei.htm


 トークが終わってからの質疑応答の際、「もしもまた同じような状況になったら絵鳩さんはどうしますか」との質問に対して、ゆっくりとマイクを手にした絵鳩は、「私はまた、同じようにするでしょう」と言った。
「皆さんもそうです。それが戦争です」
(p. 351)