英国MCA報告書 「結論と提言」
(前後の指摘も含めて提言内容として要約したものがほとんどになります。
私のMCAに関する知識は、上記の直前エントリーにリンクした範囲に過ぎませんので
特定の文言の取り違えや、文脈の理解の不十分など、誤りがあるかと思います。
お気づきの際にはご教示いただけると幸いです)
特定の文言の取り違えや、文脈の理解の不十分など、誤りがあるかと思います。
お気づきの際にはご教示いただけると幸いです)
○主要原則の実施:MCAは狙い通りに機能しているか?
MCAそのものは関係者の間で広く支持されているが、その実施状況には問題がある。
特に重要な指摘としては、
2. The empowering ethos of the Act has not been widely implemented. Our evidence suggests that capacity is not always assumed when it should be. Capacity assessments are not often carried out; when they are, the quality is often poor. Supported decision-making, and the adjustments required to enable it, are not well embedded. The concept of unwise decision-making faces institutional obstruction due to prevailing cultures of risk-aversion and paternalism. Best interests decision-making is often not undertaken in the way set out in the Act: the wishes, thoughts and feelings of P are not routinely prioritised. Instead, clinical judgments or resource-led decision-making predominate. The least restrictive option is not routinely or adequately considered. This lack of empowerment for those affected by the Act is underlined by the fact that many responsible for its implementation continue to consider it as part of the safeguarding agenda.
意思決定能力のアセスメントは行われていないことが多く、
行われていても、その質は低く、
支援を受けた意思決定もそのための諸々の調整もちゃんと定着していない。
組織にリスク回避とパターナリズムの文化が広がっているために
いわゆる「愚かな決定」(愚行権)という概念が阻まれている。
最善の利益検討による意思決定もMCAに定められたとおりに行われていないことが多く、
本人の望みや考えや気持ちをまず尊重するというふうにはなっていない。
それよりも臨床判断や資源によって決められていることが多い。
最も制約の少ない選択肢も、必ず適切に検討されているというふうになっていない。
意思決定能力のアセスメントは行われていないことが多く、
行われていても、その質は低く、
支援を受けた意思決定もそのための諸々の調整もちゃんと定着していない。
組織にリスク回避とパターナリズムの文化が広がっているために
いわゆる「愚かな決定」(愚行権)という概念が阻まれている。
最善の利益検討による意思決定もMCAに定められたとおりに行われていないことが多く、
本人の望みや考えや気持ちをまず尊重するというふうにはなっていない。
それよりも臨床判断や資源によって決められていることが多い。
最も制約の少ない選択肢も、必ず適切に検討されているというふうになっていない。
3.The presumption of capacity, in particular, is widely misunderstood by those involved in care. It is sometimes used to support non-intervention or poor care, leaving vulnerable adults exposed to risk of harm. In some cases this is because professionals struggle to understand how to apply the principle in practice. In other cases, the evidence suggests the principle has been deliberately misappropriated to avoid taking responsibility for a vulnerable adult.
とりわけ医療や福祉の関係者に誤って理解されているのは
そうでないと実証されない限り能力があると前提する原則。
この原則が却って介入しないことや劣悪なケアの正当化に使われて、
成人弱者が害を受けるリスクに晒されている。
専門職がこの原則をどのように適用するかで悩むケースもあるが、
逆に、成人弱者への責任を負わないで済ませるために、あえて悪用しているケースもある。
とりわけ医療や福祉の関係者に誤って理解されているのは
そうでないと実証されない限り能力があると前提する原則。
この原則が却って介入しないことや劣悪なケアの正当化に使われて、
成人弱者が害を受けるリスクに晒されている。
専門職がこの原則をどのように適用するかで悩むケースもあるが、
逆に、成人弱者への責任を負わないで済ませるために、あえて悪用しているケースもある。
5.The general lack of awareness of the provisions of the Act has allowed prevailing professional practices to continue unchallenged, and allowed decision-making to be dominated by professionals, without the required input from families and carers about P’s wishes and feelings.
MCAの規定するところが理解されていないために
専門職がこれまでどおりのやり方を変えることなく、
本人の望みや気持ちについては家族と介護者からの情報を
勘案することが求められているにもかかわらず、
それをせずに専門職主導で意思決定が行われている。
MCAの規定するところが理解されていないために
専門職がこれまでどおりのやり方を変えることなく、
本人の望みや気持ちについては家族と介護者からの情報を
勘案することが求められているにもかかわらず、
それをせずに専門職主導で意思決定が行われている。
6.A fundamental change of attitudes among professionals is needed in order to move from protection and paternalism to enablement and empowerment. Professionals need to be aware of their responsibilities under the Act, just as families need to be aware of their rights under it.……
専門職が保護とパターナリズムの姿勢から
本人の能力を引き出しエンエパワする姿勢へと
根本的な転換をする必要がある。
専門職はMCAの下での自らの責任について周知すると同時に、
家族もMCAの下での権利について周知する必要がある。
専門職が保護とパターナリズムの姿勢から
本人の能力を引き出しエンエパワする姿勢へと
根本的な転換をする必要がある。
専門職はMCAの下での自らの責任について周知すると同時に、
家族もMCAの下での権利について周知する必要がある。
この項目での提言は2つで、
① 政府はこうした認識不足を喫緊の問題と捉えて対応すること。
② 政府は、銀行や警察などの領域を含め、
MCAの中心原則の実施状況を早急に調査すること。
① 政府はこうした認識不足を喫緊の問題と捉えて対応すること。
② 政府は、銀行や警察などの領域を含め、
MCAの中心原則の実施状況を早急に調査すること。
○MCAの不十分な実施への対応
ここでの提言は
③ 実施責任を独立した単独の組織に負わせ、
議会に対して年次報告でフィードバックすること。
④ 以前のMental Health Act委員会を手本に、
MCA推進のための団体を立ち上げ、上記の独立組織の構成などの仕事を担わせる。
③ 実施責任を独立した単独の組織に負わせ、
議会に対して年次報告でフィードバックすること。
④ 以前のMental Health Act委員会を手本に、
MCA推進のための団体を立ち上げ、上記の独立組織の構成などの仕事を担わせる。
○関係組織の監督
⑤ ケアの質コミッションCQCの医療と福祉の関連組織への鑑査の基準を
明確にMCA遵守と一致したものとすること。
明確にMCA遵守と一致したものとすること。
○専門職の研修と監督:専門職取り締まり機関と各種医学会の役割
⑥ 特にエンパワメントの精神と最善の利益検討を中心に、
政府とこれら2者とが、MCAがより尊重されるべく協働すること。
⑦英国医事委員会は、医学教育、「グッド・プラクティス」、卒後教育に
きちんとMCAを位置づけること。
⑧ 現在提案されているGPの4年間の研修にMCAを含めること。
政府とこれら2者とが、MCAがより尊重されるべく協働すること。
⑦英国医事委員会は、医学教育、「グッド・プラクティス」、卒後教育に
きちんとMCAを位置づけること。
⑧ 現在提案されているGPの4年間の研修にMCAを含めること。
○コミッショニング
⑨~⑪政府は医療と福祉のコミッショニング制度の中に、MCAの理念の適切な実施を反映させること。
○助言と情報へのアクセス
⑫現行のCode of Practiceでは情報として不十分であることから、
MCA推進グループは、関係者それぞれの立場によって必要な情報を精査・整理すること。
MCA推進グループは、関係者それぞれの立場によって必要な情報を精査・整理すること。
○自由の剥奪セーフガード
⑬現行のセーフガードは本来の目的どおりに機能しておらず批判が大きいため、
政府は包括的な見直しを行い、広くコンサルテーションを行ったうえで、刷新すること。
⑭MCA実施責任を負う独立機関は関係者からコンサルテーションを行って
新たな規制に伴う実施行動計画を作ること。
政府は包括的な見直しを行い、広くコンサルテーションを行ったうえで、刷新すること。
⑭MCA実施責任を負う独立機関は関係者からコンサルテーションを行って
新たな規制に伴う実施行動計画を作ること。
○自由の剥奪セーフガードの利用
We are concerned that there is a very real risk that the Deprivation of Liberty Safeguards are frequently not used when they should be, leaving individuals without the safeguards Parliament intended, and leaving care providers vulnerable to legal challenge.
○原則が適用されてない問題
⑮新たなセーフガードの規定はMCAの理念と原則を適正に反映したものとすること。
○セーフガードの複雑さ
⑯新たなセーフガードの規定は
専門職にも本人にも家族とケアラーにも分かりやすい
明白でシンプルな言葉で書かれること。
専門職にも本人にも家族とケアラーにも分かりやすい
明白でシンプルな言葉で書かれること。
○定義?
当面、「自由の剥奪」は定義しないことによって
ヨーロッパ人権宣言の第5条を反映させるとする政府とオフィシャル・ソリシタに同意。
が、医療と福祉の現場への支援は必要。
ヨーロッパ人権宣言の第5条を反映させるとする政府とオフィシャル・ソリシタに同意。
が、医療と福祉の現場への支援は必要。
○文言の問題
⑰「自由の剥奪」という文言は分かりにくく、
セーフガードの意図する目的が理解されるべく、
上記、独立の監督組織は優先すべき仕事とすること。
セーフガードの意図する目的が理解されるべく、
上記、独立の監督組織は優先すべき仕事とすること。
○the Relevant Person’s Representative の役割の有効性
○監督団体の役割の有効性
⑲「自由の剥奪セーフガード」の規定に替わるだけの効果的な監督機関が必要。
○新たなギャップの可能性
支援つきの住居で暮らしている人には自由の剥奪セーフガードの対象外であり、
地自体が必ず必要な時に保護裁判所を利用するわけでもないので、
新たなセーフガードの規定はそうした人々も対象とすること。
地自体が必ず必要な時に保護裁判所を利用するわけでもないので、
新たなセーフガードの規定はそうした人々も対象とすること。
○新たな対象者基準と「Bournewoodギャップ」?
Mental Health Act 1983との整合性の問題。
○独立した意思決定能力アドボケイト(IMCA)
22.~24.ICMAのより活発かつ迅速な活用に向け、政府は必要な手段を講じること。
○Lasting Power of Attorney
25.LPAの役割に対する理解が広がっていないことから、政府は
上記の独立の監督機関、the Office of Public Guardianと協働し、
啓発とLPAの役割支援に必要な対策と講じること。
上記の独立の監督機関、the Office of Public Guardianと協働し、
啓発とLPAの役割支援に必要な対策と講じること。
○治療を拒否する事前決定(ADRTs)
Advance decisions to refuse treatment are an essential means of allowing individuals to determine their care in the event that they lose capacity. As with other aspects of the Act, the general public cannot benefit from this opportunity if they are not made aware of it. Similarly, advance decisions that are not recorded and shared with relevant public bodies are likely to be ineffective. Poor understanding among health and care staff needs to be
addressed in order to promote the benefits of advance decisions to patients, as well as to ensure that they are followed when valid and applicable.
addressed in order to promote the benefits of advance decisions to patients, as well as to ensure that they are followed when valid and applicable.
26. 政府は独立の監督機関と協働して、有効で適用可能なADRTの普及と実施に向けて、国民と医療職双方に対してADRTへの啓発を進め、電子カルテへの記録も推進すること。
保護裁判所について
○遅延
27-28. 検討事案の増加と職員カットにより事案の処理が滞っていることから、政府は保護裁判所と相談の上で、職員を増員するとともに、係争点の少ない財産と金銭事案の取扱時間の削減を図り、早急にthe Rules of the Courtの刷新を図ること。
○透明性
29.透明性向上のため、保護裁判所がより多くの判決内容を国民に公開すると判断したことを歓迎。政府は政府の公式サイトへの情報公開または、特設サイトで保護裁判所が情報公開できるよう策を講じること。
○Tribunal
迅速な案件処理のために新たな司法制度を設けて保護裁判所に代替することが提案されているが、専門性の維持とコストの点で賛成できない。
○調停
30.調停を保護裁判所への申し立ての前提条件とすること。特に財産と金銭が絡んだ事案で本人にコストが及ぶ場合に。
○アクセス
31. どのような係争で保護裁判所の判断を仰がなければならないか、地方自治体の職員に周知されておらず、本人以外の関係者の意見が一致した際に本人が同意していなくとも、その意思決定が通ってしまっている懸念から、政府はガイダンスを出すこと。
○法的支援(Legal Aid)
32.-34.社会で最も弱い人々の意思決定への支援の必要性を唱えたMCAの精神にのっとり、自由の剥奪が起こっているかどうかが争点となるケースを含め、所得審査なしに法的支援が一貫性をもって提供される必要がある。the Joint Committee on Human Rights の懸念表明にあるように、法的支援の資格がないことを理由にオフィシャル・ソリシタが代理を引き受けないために法的手続きが取れない事例など、早急に現状のギャップを埋めること。政府はそのために必要な策を講じること。
○罰則規定
35. 政府はMCA第44条の適切な適用を担保すべく、その違反が法的に検証されているかどうかの検討を始め、十分に行われていない場合には新たな規制を設けること。本報告書の刊行から1年以内にその結果を発表すること。
○MCA実施状況の評価
36.-37.政府はMCAがかかわるすべてのセクターで実施状況の恒常的モニタリングを行えるよう必要な措置を講じること。
○一般国民の姿勢の評価
38. 社会の文化の変化を捉えるためには、MCA実施以前から行われるべきだったが、政府は国民、専門職双方のMCAに対する姿勢を測る確かな方策を導入すること。
○MCAの検証の続行
39.本報告書の刊行から12ヶ月以内に、the Liaison Committeeは本報告書の主要な2提言に対して政府が起こしたアクションのエビデンスを政府に求めること。