減圧開頭術で重症障害を負った人の大半が「生きられてハッピー」

重症の脳損傷を負った患者さんに
脳浮腫で頭蓋内の圧が高まらないよう、救命措置として
頭蓋骨の一部を外す減圧開頭術が行われる場合がある。

この治療法の問題は、
患者に重症障害が残ることが多い点。

患者の多くは健康な若年者で、
術後の障害が本人にとっても家族にとっても受け入れがたいものとなる可能性があるため、
生命倫理学者はインフォームドコンセントが必須だという。

一方で、
この手術を必要とする患者は同意できる状態にはない、という問題がある。

果たして、この手術を施された患者たちは
事後的に同意を与えるものだろうか?

言い換えれば、
彼らは障害のある人生となっても救命されたことを喜んでいるだろうか?

健康な人が「受け入れがたい」と感じる状態と、
障害のある人の感じ方とは異なっている可能性もある。

……ということで、
オーストラリア、パースの研究者チームが
重症障害を負って少なくとも3年間生存している患者20人にインタビューしたところ、

全員から回答は得られなかったものの、大多数が
減圧開頭術が行われて救命されたことを嬉しい(happy)と答えた。

The Journal of Medical Ethicsに掲載された論文の結論は、

Many patients appeared to have adapted to a level of disability that competent individuals might deem unacceptable. This does not necessarily mean that such outcomes should be regarded as ‘favourable’, nor that decompressive craniectomy must be performed for patients with predicted poor outcome. Nevertheless, those burdened with the initial clinical decisions and thereafter the long-term care of these patients may draw some support from the knowledge that unfavourable may not necessarily be unacceptable.

意思決定能力のある患者であれば受け入れがたいと考える可能性のあるレベルの障害に、
多くの患者は適応しているように見えた。

これは必ずしも、
そうしたアウトカムが「望ましいもの」とみなされるべきだということを意味するわけでも、
アウトカムが悪いと予測される患者に減圧開頭術が実施されるべきだということを意味するわけでもない。

それでもなお、当初の臨床判断やこうした患者の術後の介護の負担を負う人々にとっては、
「望ましくない」が必ずしも「受け入れがたい」だとは限らないと分かったことは、
何がしかのサポートになるだろう。



これは「無益な治療」論の文脈で考えると、
非常に重要な調査結果。

そういう趣旨のコメントも入っている。

This piece is important to report as anyone who has worked with people with disabilities knows health professionals tend to view a person's quality of life more negatively than the view the person holds of themselves. Accessibility of environments, community attitudes, access and social inclusion enhance or impede a persons quality of life - people deal with limitations every day and with chronic conditions with good care.

この記事は重要。障害のある人に関連する仕事についている人なら誰だって知っているけれど、
医療職は障害のある人のQOLを本人が思っているよりも低く見積もりがち。

その人の置かれた環境が障害者にとってアクセスできるものとなっているかどうか、
地域の人々がどういう態度をとるかとか、アクセスと社会的包摂によって、
QOLは高められもすれば、阻害されもする。

人はみんな日々何らかの限界に対処しているし、
慢性的な状態だって良いケアがあれば……(途中で切れている)