スコットランドの高齢のいとこ2人が一緒にスイスで幇助自殺

現在、議会でPAS合法化法案が審議されている、スコットランド在住の高齢者2人が
スイスの Eternal Spiritという自殺幇助クリニックで、手をつないで自殺。

2人は従弟同士の
Phyllis McConachieさん(89)と Stuart Hendersonさん(86)。

Phyllisさんは耳が聞こえず、Stuartさんは目が見えない。
2人はスコットランドのTroonで40年間、互いの耳と眼として一緒に暮らしてきた。

最近になってPhyllisさんが転んで腰を痛めたことから
次にこういうことがあったらPhyllisさんは入院し、
残ったStuartさんはケアホームに入れられて離れ離れになる、
互いの支えなしには暮らせない、と不安を強め、

スイスのEternal Spiritというクリニックで
2つのベッドに並んで手をつなぎ、自殺した。

記事の記述から推測すると、
英国の自殺幇助団体(the British assisted-dying group)Friends at the Endが
支援したものと見られ、同団体のLibby Wilson医師が
スイスへ行きたいとの2人の考えが強固だったことや、
ずっと一緒に暮らしてきて、離れ離れになるのが耐えがたかったこと、
2つのベッドに横たわって手をつないで穏やかに亡くなったことなど、
2人の様子をメディアに語っている。

Eternal SpiritのPreisig医師についても
Wilson医師は「考え深く思いやりのある」医師だと形容。

Perisig医師がスイスからスコットランドのTroonにまでやってきて、
2人の意思を確認して帰った後、2人がスイスに行き、
バーゼルのEternal Spiritが所有するアパートで致死薬の点滴によって自殺したとのこと。



この事件について、
Daily Recordが興味深い問いを投げかけている。

In their own minds, and in those of many who knew them, the cousins made a rational and proper decision.

本人2人も、2人を知っていた多くの人も、2人の決断は合理的で妥当なものだという考えだった。

Euthanasia is a term that fills many with a moral fear and outrage.

安楽死とは、多くの人を道徳的な恐怖と怒りで満たす言葉だ。

But these two showed that the fear of losing dignity, self-respect and lifelong company in old age can conquer any moral objection.

しかし、この2人が示したのは、尊厳と自尊と生涯をともにしてきた相手を高齢になって失うことの恐怖は、どんな道徳的な反対をもしのぐ可能性なのだ。

If, as a society, we do not want to condone euthanasia then we have to ask ourselves very hard what we provide as a society in terms of social, medical and moral support for the elderly.

もしも我々が社会として安楽死を許したくないのであれば、我々は高齢者に社会としてどのような社会支援、医療支援、道徳的な支援を提供するのかを、真剣に自らに問わなければならない。

If death is not the answer to infirmity, then what is?

死が答えでないならば、何が答えなのか?

This is a question not just for the churches and philosophers, it is one for communities, politicians and each of us who has a connection to elderly relatives and friends.

これはただ教会や哲学者に向けられた問いではなく、地域や政治家、そして高齢の親戚や友人とつながりのある我々ひとり人に向けられた問いなのだ。


この問いには、

介護と医療のシステムに組み込まれると離れ離れにされることを恐れて
医師による幇助を受けて自殺した2人の個別事例から、
まず「医師による自殺幇助」を認めるかどうかという問いを導き出し、

それを前提に置いた上で、
それを認めないというなら「介護と医療をどうするのか」と次の問いを導き出すことによって、

介護と医療の整備か、さもなくばPASという2者択一の議論の構図を組み立てている点で、
すでに偏向があると思うのだけれど、

少なくとも、
この問題は実際には高齢者の医療と介護の問題だという視点、
それから社会としての我々の選択の問題だという視点は
個人の選択の権利として問題を描いてきた英国、スコットランドのメディアでの議論には
これまであまり見られなかったような気がする。



それにしても、スイスで外国人を対象に自殺幇助をやるのは、
もはや有名なディグニタスだけではなくなったのですね。

しかも、ディグニタスはクリニックではなくて、
あくまでも患者さん個人が医師から致死薬を手に入れるプロセスと、
自殺する前後の支援をする団体のようだけれど、

こちら、Eternal Spiritは
医師がやっている堂々たる自殺幇助クリニック……。