湯原悦子氏講演「介護殺人と介護者支援」メモ

2015年6月21日に明治薬科大学の剛堂会館で開催された
一般社団法人 日本ケアラー連盟主催、ケアラー支援フォーラム2015での
日本福祉大学 湯原悦子先生による基調講演「介護殺人と介護者支援」から

メモしておきたいことを。

要介護者等の数の推移

介護保険制度におけるよう介護者または要支援者と認定された人は
 平成24年(2012)年度末で561.1万人。
 平成27年(2015)2月末現在では602.6万人。

平成26年版 障害者白書(全体版)によると
 在宅の身体障害者は 386.4万人。
 そのうち65歳以上が 265.5万人(68.7%)。
 在宅の知的障害者は 62.2万人。
 そのうち65歳以上が占める割合は 9.3%だが、
 H17年からH23年の6年間で 5.6%も伸びている。

厚労相「患者調査」より作成されたデータによると、
 平成23年の外来の精神障害者は 287.8万人。
 そのうち65歳以上の占める割合がH17年からH23年の6年間で 5.2%も伸びている。

・すなわち在宅で生活しており介護が必要な人の数は増加している。

・一方、平成25年晩国民生活基礎調査
「要介護者等のいる世帯の構成割合の年次推移」では

  ●3世代世帯は  H13年の 32.5% から H25年には 18.4%の減。
  ●高齢者世帯は  H13年の 35.3% から H 25年には 50.9%の増。
  ●同居の介護者では、80歳以上が男性で18.7%、女性で10.2%も占める。

介護殺人の現状

警察庁の2007年から2012年までの統計によると
「介護・看護疲れ」を動悸として検挙された殺人は
2012年までの6年間に 234件、傷害致死は 16件、発生。

厚労省の集計によると、
 2006年度から2013年度までの7年間に
高齢者虐待等による死亡例は 202件生じており、205人が死亡。
障害者虐待等による死亡例は2012年10月施行から1年間で 3件(家庭での死亡2例)。

・被害者60歳以上、親族により殺害、事件の背景に介護が関係している事件を
 全国各地の新聞30紙から抽出した1999年から2014年のデータによると、
 少なくとも 672件発生、680人が死亡。平均して年 40件発生。

・加害者は男性が 72.6% 女性が 27.4%
 被害者は男性が 26.2% 女性が 73.8%

・介護殺人の加害者の属性の割合では
 息子が親を殺したケースが 32.9%
 夫が妻を殺したケースが  33.6% と高い。

 妻が夫を殺したケースが 13.2%。 
 娘が親を殺したケースが 10.4%と続く。

・被害者の年齢では
 2011年の被害者90歳以上が 9人(18%)と
 介護の長期化による介護者の疲労が思われる。

・加害者の年齢では
 70代以上が 35.9%、80歳代以上が 13.8%、90代の人も。

介護者支援の4つのモデル  イギリス Twigg とAtkin(1994)

第1…介護者を「主たる介護資源」と位置づけるモデル。

介護者がほとんどのケアをしていてもそれは当然。関心は要介護者、介護者は無料の資源とされ、インフォーマルなケアを公的ケアで対応しようとすること、介護者の負担を軽減することへの社会的、政策的関心は低い。

第2…介護者を「専門職の協働者」と捉えるモデル。

介護者は専門職と協働してケアに従事する人、要介護者の状態を改善することが介護者と専門職双方に共有された目的で、介護者の意欲、モラル、負担は考慮されるが、この目的の範囲においてである。

第3…介護者も「援助の対象」と捉えるモデル。

介護者のストレスを軽減することにより、介護者が高いモラルで介護役割を継続的に果たすことが期待される。様々な形のレスパイトが大きな効果をだせる。

第4…介護者を「介護者」という視点ではなく、社会に生きる一人の市民として捉えるモデル。

要介護者と介護者それぞれを個人として位置づけ、個別に支援する。介護による社会的排除、つまり介護の役割を担うことにより、社会で活躍したり生活を楽しんだりする機会が失われることを社会で解決すべき問題と考える。

Twiigg, J. & Atkin, K, 1994, Carers perceived: Policy and practice in informal care. Open University Press