難病の5歳児の「死の自己決定」を「尊重」する両親(OR州)

オレゴン州の話題。

Julianna Snowさん(5)はシャルコー・マリー・トゥース病で、
酸素マスクをつけている。

体力が落ちているので、ちょっと風邪をひいても肺炎になる可能性がある。

次に病気になった時に救命できるかどうかは不透明で、
仮に救命できたとしても生涯、人工呼吸器をつけて鎮静されることになる確率が高い。

そこで両親は
難病の子の常で年齢よりも成熟度は高いと考え、
ジュリアナちゃんに選択を提示することに。

お母さんが公開したやりとりの一部は以下。

Moon: You don't want to go to the hospital, right, J?
母:もう病院には行きたくないのよね、J?

Julianna: I don't like NT [naso-tracheal suction, the thing she hated the most from the hospital].
ジュリアナ:吸引は嫌い。(鼻から気管に管を突っ込む痰の吸引は、彼女が病院で最も嫌がっていること)

Moon: I know. So if you get sick again, you want to stay home?
母:知ってる。じゃぁ、次に病気になったら、うちにいたい?

Julianna: I hate NT. I hate the hospital.
ジュリアナ:吸引は嫌い。病院は嫌い。

Moon: Right. So if you get sick again, you want to stay home. But you know that probably means you will go to heaven, right?
母:そうよね。じゃぁ今度病気になったら、家にいたいのね。でも、そうすると、天国に行くことになるかもしれないけど、それは分かってる?

Julianna: (nods)
ジュリアナ:(うなずく)

Moon: And it probably means that you will go to heaven by yourself, and Mommy will join you later.
母:それって、たぶん一人で天国へ行くってことだよ。ママも後で行くけど。

Julianna: But I won't be alone.
ジュリアナ:でも、私ひとりぼっちにはならないんでしょ。

Moon: That's right. You will not be alone.
母:そうよ。ひとりぼっちにはならないわ。


このニュースには賛否両方のコメントが寄せられていて、
母親が誘導しているとの批判も。

主治医は娘の意思を尊重するという両親の決定を尊重するとしている。

A・Caplanは、
「私は納得できません。懸念がありますね。
4歳児に意思決定できるのはどんな音楽を聴くか、どんな絵本を読むかであって、
死の概念を理解できる可能性は、ゼロだと思います。
そういう思考力は9歳とか10歳までは十分に発達しません」



私には、ジュリアナちゃんは
病院へ行ったら、また苦しい吸引をされるから、それが嫌だと言っているだけで
別に死にたいと言っているわけでもなんでもなのに、
母親がそれを無理やりに「死んでもいいから家にいたい」という話に
もっていっているような感じがする。

この話を持ち出した時点で親の側に
「そんなに病院が嫌なんだったら、死なせてあげよう」と
「死なせてあげる」ことの意思決定がされてしまっているんでは?

死の概念についても、死ぬというのがどういうことか、
分かっているとは思えない。

「天国」というところへ「行く」ことだと思っていて、
そこへ「自分ひとりで行くのは嫌だ」と言っているだけのように聞こえる。

主治医も主治医だと思うのだけれど、
この状態では「子ども本人の意思を尊重する」という問題ではなく、

頻繁に病院で嫌なこと痛いこと苦しいことに耐えなければならない子どもの
恐怖やストレスに医療がどのように対応していくかという問題ではないんだろうか。

OR州在住の一家だということがどのくらい関係しているのかは
知りようがないけれど、

やっぱりこれも「死ぬ権利」議論が広がることによって起きる「滑り坂」の
一形態なんじゃないんだろうか。