保護裁判所、最小意識状態の68歳女性の生命維持停止を命じる(英)

保護裁判所ということは、
MCA(文末に関連エントリー)に法った手続きがとられたということなんだろうと思うのですが、

最小意識状態と診断された患者から栄養と水分が引き上げられる
英国で初めての事例とのこと。

(ただし、患者の死後に判断が出たとはいえ、
文末にリンクしたJamesの事例の際にも、英国で初めての事例だという記載もあった)

最小意識状態と診断されている68歳のMS患者の女性、Mrs.Nについて、
「もう何年も、とてつもなく屈辱的で尊厳のない状態に苦しんできた」とする
娘の訴えを受けて、

保護裁判所のHayden判事は、
医療職や他の家族から聞き取りをおこない、以下のように判断。

In his conclusion, the judge said he was “required to evaluate the inviolability of life as an ethical concept and to weigh that against an individual’s right to self-determination or personal autonomy”.

He added that, in his belief, Mrs N would have found her circumstances “profoundly humiliating” and would have wanted to avoid causing her family “distress”.

He said “those who would not wish to live in this way must have their views respected too”.


生命の不可侵性という倫理概念と個々人の自己決定と自律の権利を勘案した、

Mrs.Nに自己決定権があったら
今の状態を「きわめて屈辱的」なものと感じ、
家族に「苦しみ」を与えることは避けたいと考えただろう、

こういう生き方はしたくないという人々の考え方も尊重されるべきである、と。


Doctors told: ‘End humiliating life of MS patient’
Christian Institute, November 20, 2015


英国では、2011年に同じような家族の訴えで起こされた裁判で、
介護氏らの証言を機に診断が植物状態から最小意識状態へと覆り、
裁判所が生命維持の続行を命じた興味深いMargot(仮名)事件があった ↓
「生きるに値しないから死なせて」家族の訴えを、介護士らの証言で裁判所が却下(2011/10/4)

その後、こういう事件もあった ↓
裁判所、最小意識状態での「無益な治療」拒否を認めず:David James事件(英)(2012/12/13)
最小意識状態の患者への生命維持差し控えを上訴裁が認める(英)(2013/3/12)
(ただし病院側が治療の停止を求めた訴訟。さらに上訴判決の時にはJamesさんは既に死去)





ついでに、こんな話も ↓
日本の成年後見人制度は国連障害者人権条約に抵触(2010/9/2)