米国の病院、脳死判定手順に今なお大きなバラつき

米国全土で脳死判定の方法と基準を標準化しようと
2010年に米国神経学会が脳死判定ガイドラインを策定したが、

多くの病院で、ガイドライン通りの判定が行われていない実態が明らかになっている。

ガイドラインの策定にもかかわったイェール大学のDavid Greer医師らが3年かけて
492の病院の脳死診断方針を調査したところ、
ガイドライン適用実態にはばらつきが大きいことが判明した。

Variability of Brain Death Policies in the United States
David M. Greer, MD, MA; Hilary H. Wang, BA; Jennifer D. Robinson, APRN; Panayiotis N. Varelas, MD, PhD; Galen V. Henderson, MD; Eelco F. M. Wijdicks, MD, PhD

アブストラクトの結論は以下。

Conclusions and Relevance : Hospital policies in the United States for the determination of brain death are still widely variable and not fully congruent with contemporary practice parameters. Hospitals should be encouraged to implement the 2010 AAN guidelines to ensure 100% accurate and appropriate determination of brain death.

米国の病院が脳死判断方針は依然として大きくばらついており、
現在の臨床パラメーターと完全に一致してはいない。

脳死を100%正確にかつ適切に判定するためには、
病院に2010年のAANガイドラインを実行するよう求めるべきである。


例えば、判定前に体温を測ることを必要としない方針が20%。
(低体温では脳機能が抑制される)

約半数が、血圧が脳死判定に適切であることの確認を求めていない。

ほとんどの病院で、
脳死判定を脳神経科医、脳神経外科医や十分な研修を受けた医師にすら限定しておらず、
中にはナース・プラクティショナーや医師のアシスタントにやらせている病院まで。

生命倫理学者のLeslie Whetstineは
「ある病院が別の病院と違う脳死判定方法を用いていたら、
みんな『それって本当に死んでいるのか?』と疑問に思いかねない」




Greer医師、メディアに「脳死と誤診された事例はないものの」と語っているんだけど、
そんなの、どうして断言できるんだろう……?


【31日追記】
この論文の指摘を受け、Thaddeus Popeがエントリーを書き、
相次いでいるマクマス訴訟のいずれかでマクマス側が勝訴すれば
著者らがこれまでは見つかっていないとしている
脳死の誤診”false positive determination of brain death”が初めて認められるケースとなる、と。