認知症ケアのガイド『ケアの三角形』（英国）
認知症ケアのガイド『ケアの三角形』（英国）
『ケアの三角形 The Triangle of Care』――。昨年秋、英国の介護者支援チャリティ、ケアラーズ・トラストが英国看護協会との協働により刊行した認知症ケア・ガイドのタイトルである。表紙には交通標識のような三角形のサインが掲げられている。上端には「認知症の人」、左下に「専門職」、右下に「介護者」が配置されている。副題は『介護者と共に：認知症ケアのベスト・プラクティス（優れた取り組み）へのガイドCarers Included: A Guide to Best Practice for Dementia Care』。
ケアラーズ・トラストがThe Triangle of Careの初版を出したのは2010年のことだ。精神障害のある人の医療において介護者の存在と知識や意見が専門職に尊重されケアに反映され、また専門職が介護者支援の意識を持つよう、グッド・プラクティスのスタンダードを明示した。このキャンペーンの成果を反映して今回、改定版“The Triangle of Care, Carers Included: A Guide to Best Practice in Mental Health Care in England, Second Edition”が発表された。「ケアの三角形」を達成するための6つの主要スタンダードは以下の通りとなっている。
１） 介護者は誰か、またその介護者はどのような重要な役割を果たしているかを、最初の接触時あるいはその後できるだけ早い時期に把握する。
２） スタッフが「介護者への意識」が高く、介護者をケアに含める戦術の研修を受けている。
３） 守秘義務と情報共有に関する方針と実践プロトコル（手順書）が整備されている。
４） 介護者を担当する責任者ポストが明確に規定され設けられている。
５） 介護者へのサービスの説明とスタッフへの紹介が行われ、その際にはケアの行程全般について適切な情報が様々に提供される。
６） 様々な介護者支援サービスが受けられる。
ガイドにはこれらスタンダードの理念の詳細な解説と共に、参照情報も豊富に盛り込まれている。また「ケアの三角形」を実現、維持していくには定期的なアセスメントと監督が必要だとして、巻末に添付されているのは自己アセスメント・ツール。
一方、英国看護協会は2011年に「認知症における尊厳：一般病院のケアを変革する Dignity in Dementia: Transforming General Hospital Care」と銘打ったプロジェクトにおいて、病院ケア改善には家族介護者を参加させることが必要だと強調し、総合病院における認知症ケアの改善に向けたキャンペーンを続けてきた。このたび“The Triangle of Care”の改訂に際し、両者は協働で上記の認知症ケア・ヴァージョンを作成。英国看護協会ではまず手始めにイングランドとウェールズの9つの病院に導入し、その他の病院にも推奨していく予定とのこと。同学会の認知症プロジェクトの責任者、ラチェル・トンプソン氏はガーディアン紙に対して次のように語っている。
「多くの病院のケアが患者にだけ焦点を当てて終わっており、スタッフは普通、介護者を関わらせて一緒に、とは考えません。どこかに『私たちは専門家。患者は面倒を見ますから、どうぞ帰ってお休みください』といった意識もあります。でも介護者を患者のことを一番よく知っている人物とみなし、厄介を増やす存在としてではなく、これから自分たちが最善を尽くそうとする相手へのケアを助けてくれる存在として捉えるならば、専門職は介護者から学ぶことができます」
認知症の夫が前立腺の手術で入院した際に病棟を抜け出し、途方に暮れた体験のある女性は「（病棟スタッフには）認知症への意識がなく、夫が認知症ためにどういう行動をとるかという予測がまったくできていませんでした。そうした話ができる人も見つからず、私はまるでレンガの壁にでも頭を打ち付けているような気持ちでした」と語る。
また母親を20年間介護したある男性は「（病院では）システム全体に敵対されているような感じがしました。医師と看護師に自分の言いたいことを聞いてもらおうと大変な思いをしましたが、私には自分の洞察と知識なしには医師も看護師も母を助けることはできないと分かっていたんです」「『ケアの三角形』によって初めて、私と母のような関係の重要性を認めてもらえました。医療職と制度設計をする公務員がこの重要性を理解し始めるなら、前に進むことが可能です」
認知症の人を念頭に作られたものだが、上記スタンダードは病気や障害のある人の介護をしている人すべてに当てはまると、ガイドの一節には書かれている。
http://static.carers.org/files/the-triangle-of-care-carers-included-best-practice-in-dementia-care-final-6870.pdf
『ケアの三角形 The Triangle of Care』――。昨年秋、英国の介護者支援チャリティ、ケアラーズ・トラストが英国看護協会との協働により刊行した認知症ケア・ガイドのタイトルである。表紙には交通標識のような三角形のサインが掲げられている。上端には「認知症の人」、左下に「専門職」、右下に「介護者」が配置されている。副題は『介護者と共に：認知症ケアのベスト・プラクティス（優れた取り組み）へのガイドCarers Included: A Guide to Best Practice for Dementia Care』。
ケアラーズ・トラストがThe Triangle of Careの初版を出したのは2010年のことだ。精神障害のある人の医療において介護者の存在と知識や意見が専門職に尊重されケアに反映され、また専門職が介護者支援の意識を持つよう、グッド・プラクティスのスタンダードを明示した。このキャンペーンの成果を反映して今回、改定版“The Triangle of Care, Carers Included: A Guide to Best Practice in Mental Health Care in England, Second Edition”が発表された。「ケアの三角形」を達成するための6つの主要スタンダードは以下の通りとなっている。
１） 介護者は誰か、またその介護者はどのような重要な役割を果たしているかを、最初の接触時あるいはその後できるだけ早い時期に把握する。
２） スタッフが「介護者への意識」が高く、介護者をケアに含める戦術の研修を受けている。
３） 守秘義務と情報共有に関する方針と実践プロトコル（手順書）が整備されている。
４） 介護者を担当する責任者ポストが明確に規定され設けられている。
５） 介護者へのサービスの説明とスタッフへの紹介が行われ、その際にはケアの行程全般について適切な情報が様々に提供される。
６） 様々な介護者支援サービスが受けられる。
ガイドにはこれらスタンダードの理念の詳細な解説と共に、参照情報も豊富に盛り込まれている。また「ケアの三角形」を実現、維持していくには定期的なアセスメントと監督が必要だとして、巻末に添付されているのは自己アセスメント・ツール。
一方、英国看護協会は2011年に「認知症における尊厳：一般病院のケアを変革する Dignity in Dementia: Transforming General Hospital Care」と銘打ったプロジェクトにおいて、病院ケア改善には家族介護者を参加させることが必要だと強調し、総合病院における認知症ケアの改善に向けたキャンペーンを続けてきた。このたび“The Triangle of Care”の改訂に際し、両者は協働で上記の認知症ケア・ヴァージョンを作成。英国看護協会ではまず手始めにイングランドとウェールズの9つの病院に導入し、その他の病院にも推奨していく予定とのこと。同学会の認知症プロジェクトの責任者、ラチェル・トンプソン氏はガーディアン紙に対して次のように語っている。
「多くの病院のケアが患者にだけ焦点を当てて終わっており、スタッフは普通、介護者を関わらせて一緒に、とは考えません。どこかに『私たちは専門家。患者は面倒を見ますから、どうぞ帰ってお休みください』といった意識もあります。でも介護者を患者のことを一番よく知っている人物とみなし、厄介を増やす存在としてではなく、これから自分たちが最善を尽くそうとする相手へのケアを助けてくれる存在として捉えるならば、専門職は介護者から学ぶことができます」
認知症の夫が前立腺の手術で入院した際に病棟を抜け出し、途方に暮れた体験のある女性は「（病棟スタッフには）認知症への意識がなく、夫が認知症ためにどういう行動をとるかという予測がまったくできていませんでした。そうした話ができる人も見つからず、私はまるでレンガの壁にでも頭を打ち付けているような気持ちでした」と語る。
また母親を20年間介護したある男性は「（病院では）システム全体に敵対されているような感じがしました。医師と看護師に自分の言いたいことを聞いてもらおうと大変な思いをしましたが、私には自分の洞察と知識なしには医師も看護師も母を助けることはできないと分かっていたんです」「『ケアの三角形』によって初めて、私と母のような関係の重要性を認めてもらえました。医療職と制度設計をする公務員がこの重要性を理解し始めるなら、前に進むことが可能です」
認知症の人を念頭に作られたものだが、上記スタンダードは病気や障害のある人の介護をしている人すべてに当てはまると、ガイドの一節には書かれている。
http://static.carers.org/files/the-triangle-of-care-carers-included-best-practice-in-dementia-care-final-6870.pdf
