NYT「億万長者が手前勝手な理想で米国の科学を民営化している」

NYTに標題のタイトルの記事があり、
そこに、目新しい表現がある。

Science Philanthropy …… 直訳すると「科学慈善」
Science Philanthropist …… 直訳すると「科学慈善家」

記事の概要は以下。

The American Association for the Advancement of Scinenceの政策アナリスト、Steven E. Edwards氏
「良きにつけ悪しきにつけ、
21世紀の科学実践は
国民的な優先順位によってでも
科学者同士の検討グループによってでもなく
巨額の金を持っている個々人の特定の好みによって決まっている」

このように個人主義的な企業家としての信条に基づいて、
その桁外れの資産によって行われるのが
新たなエコノミー時代の慈善。

そのため、医学研究機関は所属の科学者や医師らに対して、
いかに民間の慈善からの資金をゲットするか
そのノウハウの教育にも力を入れている。

そうした動きに拍車をかけたのが
2010年にビル・ゲイツ夫妻とウォレン・バフェットが始めた
Giving Pledgeキャンペーン。

全米約500人の億万長者のうち5分の1がすでにプレッジに登録しており、
その4割の資金提供先は科学、医療、と環境の分野。

そうした“科学慈善家”は
公的な資金による科学のまどろっこしさが我慢ならない一方、
公的な資金の研究では考えられもしないようなリスクも喜んでとる。

もともと疾病の研究は民族や経済によって払われる注意に格差があったが、
慈善家の病気との闘いはさらにこれらの格差を拡大するリスクが大きい。

また、富裕な大学や研究機関がさらに富裕となり、
研究機関間の格差拡大にもつながっているとの指摘も。

しかし、これらのバランス・シフトの実態はいまだに掴めておらず、
米国科学財団が最近になって慈善の全容を調査すると発表したばかり。




上記13年6月11日のエントリーに、
このNYTの記事で示唆されている問題を
さらに簡潔にズバリと指摘している、以下の箇所がある。

ゲイツ財団がカネを通じて
国際機関や医療系の研究所に影響力を行使していることによって、
科学者から多様な意見が出なくなり、国際機関の方針決定のプロセスにも影響して
意思決定プロセスが閉鎖的なものとなって透明性を失っている。


「科学慈善家」がゼニの力に明かして手前勝手に民営化しているのは
決して「米国の科学」だけじゃない。

さらにいえば
公的資金による研究では考えられもしないような」
「科学慈善家」が「喜んでとる」リスク……というのは、

例えば
グローバルなネオリベ経済の中での弱者を
実験資材またはバイオ資材として巧妙に活用する
倫理上のリスクだったりもする……のでは?