2015年1月14日のメモ

米国で去年5月以降、「(FDA未承認の新薬を)トライする権利」法の制定が相次いで、現在、コロラドミズーリルイジアナアリゾナで法制化。記事冒頭にある患者さんの言葉は It’s my life, and I want the chance to save it.:死ぬことが「権利」になってくれば、死を賭して何事かをすることも「権利」になる、という道理。でも、この問題はそうシンプルではない(関連を参照)と思う。私には「どうせ死ぬ人」には、いっそ自己責任で人体実験の被験者になってもらおう、という話のように見える。
http://www.nytimes.com/2015/01/11/us/patients-seek-right-to-try-new-drugs.html?emc=edit_th_20150111&nl=todaysheadlines&nlid=50068194&_r=1



ロボット介護、ロボット看護を視野に、「人間を傷つけてはならない」「人間の命令に従わなければらない」ルールのジレンマに落ち込まないよう、一定の「道徳的判断」ができる「倫理的で自律的なロボット」を作ろうとの研究が進められている。記事タイトルは「ロボットによる死」:要するに、ロボットが人間を殺すことを可能にしようという、むちゃコワい話。科学とテクノで簡単解決バンザイ文化のデジタルで単純で浅薄で皮相的で功利主義的な人間観と倫理観を先にどうにかしてもらわないと。
http://www.nytimes.com/2015/01/11/magazine/death-by-robot.html

9月に裁判所に認められたベルギーの強姦殺人犯のFrank Van den Bleekenの安楽死がいったん1月11日に予定されたものの、法務大臣がオランダの治療機関に移すと決めて中止。:そうか、精神障害者への安楽死で世界的な批判を浴びているベルギーには、こういう人の治療機関がないわけだ。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/11280
http://www.npr.org/blogs/thetwo-way/2015/01/06/375403809/in-reversal-belgium-denies-inmate-s-request-to-die
http://www.abc.net.au/news/2015-01-07/belgian-murderer-refused-medically-assisted-suicide-euthanasia/6003720

12月23日に亡くなったDebbie Purdyさんが、VSED(自発的飲食停止)は拒否していたという興味深い情報。夫も緩和医療に感謝していたし。
http://medicalfutility.blogspot.jp/2015/01/debbie-purdy-denied-vsed.html


最近ちらちら目に付いて気になっているのが death doula なる表現。:よくもまぁ次々に、「社会がじゃまっけな人を死なせること」の本質を覆い隠すための表現が出てくること。しかも真逆の概念を援用して。ドゥーラについてはこちらに ⇒ 地域ドゥーラ・プログラム(2014/5/12)
http://www.dallasnews.com/opinion/sunday-commentary/20150109-nora-zamichow-and-ken-murray-why-we-need-death-doulas.ece

米の腫瘍専門医がブログで、法的なチェックを兼ねた「自殺認定書」を作って、それを持っている人なら別に医師の手をわずらわせなくても、あらかじめ自殺幇助可能だと登録した薬局で致死薬を買えるようにすれば、と提案。:次々に立ち現れてくる「すべり坂」の形態のオリジナリティに、とうていついていけない。
http://medicalfutility.blogspot.jp/2015/01/suicide-certificates-suicide-kits.html

スコットランド議会がPAS合法化法案の審議入りして、記事多数。これは英国医師会が医療のエートスを変えるとして反対の立場を表明というもの。
http://www.gponline.com/assisted-suicide-bill-alter-ethos-medical-care-bma-warns/article/1328980


同上。エジンバラ大学の法医学者Anthony Busuttilが合法化は医師と患者の信頼関係を損なう、と警告。
http://www.thesundaytimes.co.uk/sto/news/uk_news/scotland/article1505877.ece?CMP=OTH-gnws-standard-2015_01_10

英国議会でも合法化審議は進行中。こちらはBristolの地元紙への読者投稿で、「自殺幇助は能力が低い人や高齢者を排除するための解決方法だと分からないほど国民はみんなバカで薬で頭をやられていると、政府は思ってるんだろうか」。:まったく同感。
http://www.bristolpost.co.uk/Reader-s-letter-Assisted-suicide-equals/story-25840325-detail/story.html

カトリック教会のビショップが安楽死・自殺幇助について書いたコラムで、特にオレゴン州のヘルス・プランをめぐる「抗がん剤はダメだけど自殺幇助はOK」事例について This particular case represents the ever-widening control of our lives by the government. It also signals the changing attitudes to end-of-life issues. という表現を使っているのが本質ズバリだと思う。
http://www.catholicnewsagency.com/column.php?n=3083


NY州知事のMario Cuomo氏のプロ・ライフ・スピーチ。NYにはCuomo氏が1985年に作ったタスク・フォースによる終末期医療に関する政策方針がある。:NYといえば、ウーレットの『生命倫理学と障害学の対話』の第7章のポーリオットの事例を思い出す。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/11282

CT州で抗がん剤治療を拒否していた17歳の少女に裁判所が治療を命令。9ヵ月後の18歳の誕生日以降であれば拒否できたのだけど。:「mature minors成熟した未成年」として、15歳の少年に抗がん剤治療の拒否を認めたVA州のCherrix事件についてはこちらに ⇒ http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/13603796.html
http://www.washingtonpost.com/news/morning-mix/wp/2015/01/08/connecticuts-highest-court-approves-forced-chemotherapy-for-teen/

英国NHSで高価な抗がん剤を患者が使えるようにするべく立ち上げられた Cancer Drugs Fund、一番利があるのは立ち上げを推進したビッグ・ファーマのロッシュ。
http://www.theguardian.com/society/2015/jan/08/nhs-costs-cancer-drugs-fund-review
http://www.theguardian.com/society/2014/aug/08/pharmaceutical-roche-benefits-cancer-drug-fund-nice-rejects-kadcyla

ベンチャー慈善 venture philanthropies”からビッグ・ファーマに金が流れて、薬の開発研究を民間の利益が誘導し、私物化する仕組みができあがっていることへの警告。“慈善”が科学とテクノの利権の周辺に群がっているグローバルなカラクリが、どんどん深く根を下ろしていく ⇒ NYT「億万長者が手前勝手な理想で米国の科学を民営化している」(2014/16)
http://www.nytimes.com/2015/01/06/opinion/stop-subsidizing-big-pharma.html?emc=edit_th_20150106&nl=todaysheadlines&nlid=50068194&_r=0

日本語。第一三共の米法人、リベートの疑い、医師らに講演料名目
http://www.asahi.com/articles/ASH1B1SLJH1BUHBI003.html

日本語。新型糖尿病薬服用、10人死亡 厚労省、適切使用指示へ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150109-00000006-asahi-ent

日本。「着床前スクリーニング」承認
http://opi-rina.chunichi.co.jp/topic/20141214-1.html

「グループ生殖医療と差別」から日本産科婦人科学会への抗議および意見書:問題点が非常によく分かる文書。
http://www.arsvi.com/d/p012015.htm



「脳性まひ児の補償対象数は、なぜ想定より少なかったのか 今年から対象範囲が変わる産科医療保障制度を生かすために」勝村久司さん 本当は、脳性まひの子どもの状態や数の推移がわかる統計をとり、その原因を探ることが厚生労働省の大切な仕事の1つだったはずです。にもかかわらず、この種の統計や疫学調査などの研究がほとんどなかったことには驚きを隠せません。だからこそ、産科で脳性まひになった子どものための、この「産科医療補償制度」という公的な保険制度が、必要だったと理解すべきなのかもしれません。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4605?page=1




NHSで退院可能なのに地域の介護資源の不足のために病院から出られない高齢患者の「ベッドふさぎ」問題。Bedblockersって、政府の社会保障整備の責任を個々の患者の責任に転嫁するイヤな言葉。
http://www.theguardian.com/society/2015/jan/07/patients-hospital-elderly-bedblockers-care-
http://www.theguardian.com/society/2015/jan/07/-sp-bedblockers-worsening-nhs-hospitals-crisis

日本。大都市の介護施設、求人難深刻 職員定数割れで閉鎖も:それでも介護報酬引き下げが決まる。社会保障費に回すといって、消費税を上げたのに、どうしてこうなるの? どうしてメディアはそこを突っ込まないんだろう???? どうして国民はそこのところに怒らないんだろう????
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150105-00000011-asahi-soci

日本。6歳未満の臓器提供へ=3例目、移植待機中に脳死―大阪
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150113-00000110-jij-soci


豪の政治家が、福祉の受給者は「避妊しろ、さもないと支給なし」と発言。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/11277


追いやられる命 渋谷区が公園から野宿者締め出す
http://tanakaryusaku.jp/2014/12/00010497