元ヘッジファンド・マネジャーの製薬会社CEOが薬の値段を40倍も吊り上げて開き直り、ファーマ業界からも総スカン

62年も前からあった薬、Daraprimの値段を
一錠18ドルから750ドルに40倍も吊り上げたのは、
Turing 社のCEO Marin Shkreli氏(32)。

同氏は、以前はヘッジファンドのマネジャーだった。

Daraprimは、
HIVとかガンの患者では命取りとなる寄生虫感染の治療薬。

Turing社は先月、Daraprimを買いとるや、いきなり値段を吊り上げ、
それでは治療を受ける患者の費用負担が跳ね上がると大きな批判を呼んだ。

Shkereli氏はそれを受けて月曜、火曜とテレビに出演し、
前の値段では利益が出ない、値上げはビジネス上の正当な判断、
会社が利益を上げた中から新たな薬の研究開発を行えば、それが患者の利益にもなる、
無料配布分も増やすのだから、むしろ患者のアクセスは広がる、などと強弁し、

ツイッターでも、強気の姿勢のまま
ジャーナリストをバカ呼ばわりするなどしたため、
その言動に批判が集中。

製薬会社で作る the Pharmaceutical Research and Manufacturers of America (PhRMA)も
これには対応に苦慮した挙句に、

「Turing 製薬のツイートは、PhRMAメンバーの価値観を表わすものではありません」
とツイート。

PhRMA自体、年間何千万ドルという資金を費やしてロビー活動をおこない、
議会の議論に影響を与え、政策を自らに有利に誘導するなど、
ほとんど何でも可能なほどの影響力を持っているが、
さすがに今回の同社の態度には困惑し、

何より、Shkreli氏がテレビ出演の数時間後に値段を下げることを表明し、
それによって他の製薬会社も後に続くことを余儀なくされたため、
一線を引くことに。

しかし、実際には、こうしたヤリクチは Shkreli氏の独壇場というわけでもなく、

例えば2012年には新しい大腸がんの治療薬 Zaltrapの月に11000ドルという値段に
批判が起こって、Sanofi社は半額に値下げ。

昨2014年には、
C型肝炎の治療薬 Savaldiの1日1000ドルまたは1コース84000ドルという値段について
Gilead Sciences社は議会に呼ばれて説明を求められた。

今年の夏には、Vertex製薬が卸値で年額259000ドルという
平均的家庭の収入の5倍もの値段をつけたOrkambiを巡り、
嚢胞性線維症の専門医と患者らが抗議の声を上げた。

Vertex社は、
患者数が少なく、
この薬を市場に出すまでに会社が多額の資金をつぎ込んでいると弁明。

Forbes誌も、同社は創業からの26年間で1度しか黒字になっていない、と指摘。

米国市場これまでに最も値段が高いとされる薬は
Alexion製薬のSolirisという、珍しい血液異常の治療薬で、
年間537000ドルかかる。

EUで認可された家族性リポタンパク質リパーゼ異常の遺伝子治療薬 Glyberaは
EUで150人から200人の患者数の市場しかなく、年額1億2100万ドルの値段となり、
史上初の7桁の値段の薬ということになる可能性も。






このニュースから透けて見えてくるのは2つの問題ではないでしょうか。

1つは、かねて当ブログが繰り返し指摘してきたように、
グローバル強欲ネオリベ人でなし金融資本主義では、
医療の問題は単なる医療の問題ではなく既に政治経済の問題となっている事実。


とりわけ、
株主に利益をもたらすことが企業の最大の使命とされる金融資本主義のルールに
製薬会社も取り込まれてしまっている、という事態。


2つ目は、
医療費を膨張させる要因として高齢化ばかりがあげつらわれているけれど、
実際には、もう一つ、最先端医療の急速な高度化という要因があり、

みんなが”コントロール幻想”にノセられ市場で踊らされているうちに、
医療費はこうして急速に膨張していくのだ、ということ。