「ナースの昔語り」 シリーズ1 : こうちゃんとイモ堀り
海が6歳で入園した当時からの(もちろん何度かの異動はあったけど)
昔なじみの看護師さん(男性・40代後半?)が、最近、
昔の出来事をいろいろ語ってくださるのですが、
昔なじみの看護師さん(男性・40代後半?)が、最近、
昔の出来事をいろいろ語ってくださるのですが、
それが、どれもこれも、
シェアせずにいられないほど面白く心に響く話ばかりなので、
著者の了解を得て、いくらか細部をアレンジしつつ、シリーズ的に。
シェアせずにいられないほど面白く心に響く話ばかりなので、
著者の了解を得て、いくらか細部をアレンジしつつ、シリーズ的に。
まず、第一弾のタイトルは「こうちゃんとイモ掘り」。
「こうちゃんとイモ堀り」
それは25年くらい前、療育園がまだできる前の秋のお話。当時は肢体不自由児施設のみだった園では、改築のため、前の建物の取り壊しが始まったところでした。
当時は「家庭実習」という名のもと、園生さん(と当時は呼ばれていました)たちは規則で定期的に外泊することになっていました。そんな中、いつも5歳のこうちゃんだけは帰るところがなく、ひとり園に残っていました。園生さんはこうちゃんだけ。あとは最低限の職員たち。それでも当時は、こうちゃんが一人ぼっちでいる時間は皆無なくらい、十分な職員の体制でした。
こうちゃんも、みんなが外泊して園には誰もいない、そんな自分の置かれた状況を何となく理解し始め、スネてみたりもした挙句に、仕方なく手近な職員に甘えてみたら……いくら甘えても「もっと甘えてこい!」と、十分すぎる職員数。
そんな時代の家庭実習中のお話です。
園の小さな庭には落ち葉がたくさんありました。こうちゃんと落ち葉掃除をしながら、ふ。と思い浮かんだのです。そうだ、取り壊し工事をしている中に、小さなイモ畑があった。どうせ、取り壊されるのだから、そこにイモ堀に行って、この落ち葉で焚き火をして焼きイモを作ってみよう。こうちゃんも、退屈しなくて良いだろう、と。
上司の看護師さんに聞いてみると「それはいいじゃろ」とのこと。
工事現場の探検も兼ねて、こうちゃんとイモ畑へ行きました。小さな小さな、タタミ2畳ほどの畑でしたが、2人で掘るにはちょうど良いサイズ。30分ほどで全体を掘り返し、5cm以下のイモはその場に放置。3~4本くらい、なんとか食べられそうなおイモを持ち帰りました。
次は火おこし。でも、たき火でイモを焼くというのは実は初めての経験で、焼きあがるまで3時間くらいかかることとなり、こうちゃんはその間に飽きてきました。今なら電子レンジで加熱し、その後たき火にくべるということもできるのでしょうが……。
けれど、実際にイモが焼きあがると、イモを掘り、落ち葉を集め、火をつけて焼いた、一連の行為が実に充実したものに感じられ、こうちゃんも大喜び。そうして、その日は楽しく終わったのでした。
それから3,4日たったある日、保母さんたちが、年少さん年中さんあたりの幼児さんたちを連れて行進していました。
「工事現場のほうに向かっている。まさか……」
しばらくして、保母さんの一人が戻ってきて言いました。
「いのししが、出たんよ」
「はい?」
「幼児さんたちとイモ堀りに行ったら、畑が全部、掘り返されてて、おイモが全然ないの。いや、でも、不思議なことに、小さいイモはそのまま放ってあった。いのししも小さいイモは食べんのかね?」
後日、こうちゃんとイモ堀り&イモ焼き遊びをしたことを自首。
「こうちゃんが楽しんだんなら、まぁ許すわ」
私が新人の頃の秋のお話でした。
それは25年くらい前、療育園がまだできる前の秋のお話。当時は肢体不自由児施設のみだった園では、改築のため、前の建物の取り壊しが始まったところでした。
当時は「家庭実習」という名のもと、園生さん(と当時は呼ばれていました)たちは規則で定期的に外泊することになっていました。そんな中、いつも5歳のこうちゃんだけは帰るところがなく、ひとり園に残っていました。園生さんはこうちゃんだけ。あとは最低限の職員たち。それでも当時は、こうちゃんが一人ぼっちでいる時間は皆無なくらい、十分な職員の体制でした。
こうちゃんも、みんなが外泊して園には誰もいない、そんな自分の置かれた状況を何となく理解し始め、スネてみたりもした挙句に、仕方なく手近な職員に甘えてみたら……いくら甘えても「もっと甘えてこい!」と、十分すぎる職員数。
そんな時代の家庭実習中のお話です。
園の小さな庭には落ち葉がたくさんありました。こうちゃんと落ち葉掃除をしながら、ふ。と思い浮かんだのです。そうだ、取り壊し工事をしている中に、小さなイモ畑があった。どうせ、取り壊されるのだから、そこにイモ堀に行って、この落ち葉で焚き火をして焼きイモを作ってみよう。こうちゃんも、退屈しなくて良いだろう、と。
上司の看護師さんに聞いてみると「それはいいじゃろ」とのこと。
工事現場の探検も兼ねて、こうちゃんとイモ畑へ行きました。小さな小さな、タタミ2畳ほどの畑でしたが、2人で掘るにはちょうど良いサイズ。30分ほどで全体を掘り返し、5cm以下のイモはその場に放置。3~4本くらい、なんとか食べられそうなおイモを持ち帰りました。
次は火おこし。でも、たき火でイモを焼くというのは実は初めての経験で、焼きあがるまで3時間くらいかかることとなり、こうちゃんはその間に飽きてきました。今なら電子レンジで加熱し、その後たき火にくべるということもできるのでしょうが……。
けれど、実際にイモが焼きあがると、イモを掘り、落ち葉を集め、火をつけて焼いた、一連の行為が実に充実したものに感じられ、こうちゃんも大喜び。そうして、その日は楽しく終わったのでした。
それから3,4日たったある日、保母さんたちが、年少さん年中さんあたりの幼児さんたちを連れて行進していました。
「工事現場のほうに向かっている。まさか……」
しばらくして、保母さんの一人が戻ってきて言いました。
「いのししが、出たんよ」
「はい?」
「幼児さんたちとイモ堀りに行ったら、畑が全部、掘り返されてて、おイモが全然ないの。いや、でも、不思議なことに、小さいイモはそのまま放ってあった。いのししも小さいイモは食べんのかね?」
後日、こうちゃんとイモ堀り&イモ焼き遊びをしたことを自首。
「こうちゃんが楽しんだんなら、まぁ許すわ」
私が新人の頃の秋のお話でした。