株主への利益還元最重視のファーマに吊り上げられていく米国の薬価

以下のエントリーで拾った話題の続報のようなニュース。



今度の会社は急成長中の Valeant Pharmaceuticals International。

例えば、ほんの一例としては、
ウィルソン病の治療薬で昔から使われている Cuprimineを買いとるや、
一晩で値段を4倍に吊り上げた。

毎月120錠を飲んでいる患者さんの自己負担は、
5月には366ドルだったのが、いきなり1800ドルに。
(メディケアの給付は35000ドル)

また、Glumetzaという薬を飲んでいる患者さんは、
自己負担分が5月には519.92ドルだったのが、
8月には4643ドルに跳ね上がったと言い、

「いきなり薬を作るのに4000ドルも余計に費用がかかるようにはならんだろ。
スーパーへ買い物に行って、牛乳を買おうとしたら
いきなり100ドルになってるなんか、ありえんだろ」と憤る。

血栓治療薬の Mephytonは2014年7月以降、8回も値上がりしており、
1錠9.37ドルだったものが、今では58.76ドルもする。

利尿薬の Edecrinは、2014年5日以降、9回も値上がり。
1バイアルが470ドルだったものが、今では4600ドル。

今年だけでも、
同社はブランド薬の値段を平均で66%も上げたという。

金のかかる新薬の開発研究には熱心ではなく、
既に存在する薬を買い取っては、値段を吊り上げる戦略で
投資家に利益を還元し、株価を上げて急成長している。

ビッグ・ファーマは通常、売り上げの15~20%を研究開発につぎ込むが、
同社では3%のみ。

CEOのJ. Michael Pearson氏は、
前はコンサルティング会社McKinsey & Company社のコンサルタント

いわく、
株主に対して、一つひとつの薬からマックスの利益を出す義務がある。

いわく、
中には同じ病気の治療薬なのに昔からあって使われておらず、
新しい薬よりもはるかに安く売られているものもあるが、
「製品の値段が不当で、そこに好機があるなら、我々は
株主が我々に期待するだろうと私が推測する方向で、適切に行動する」

一方、ここまでえげつないヤリクチでないにせよ、
値段を上げているのは、ファイザーやメルクなど大手のビッグ・ファーマも同様で、

いきなり一晩で3倍、4倍に吊り上げるようなことこそしないが、
2014年には13%、今年は今のところ8%のアップと、
毎年、インフレ率より高い倍率で値段は上げてきている。

Valeantのように、売上額の小さな薬の値段をガツンと上げるよりも
実際には、広く使われている薬の値段がちょっと上がるほうが、
医療費には影響が大きいとの指摘も。

例えば、近年、インシュリンの値段が上がって、
サノフィのLantus注射ペン5本パックは
2010年には179ドル程度だったのに去年は372ドルになった。

現場の医師は、
こんなことは10年から5年前までは聞いたこともなかった、と呆れる。

ファーマ側は研究開発のリスクを織り込んで、
売れる薬にはプレミアムをつけないとやっていけないと主張しており、
選挙を前に、政府も手を打ちにくいものとみられる。


経済オンチの私には、よく分からないのだけれど、
この記事の最後のところに、以下の下りがある。

 The Manneses  (spitzbiara注:夫がCuprimineを飲んでいて、値上がりで妻がパートを増やしたという夫婦) are applying for financial assistance from a foundation recommended by Valeant to help pay for Cuprimine.


Valeant社が困っている患者さんに金銭的支援を求めるよう勧める、
この「財団」については詳細が全くないんだけど、

これって、まさか
例のサブプライム・ローンの薬版ってな可能性は……?




そういえば、こういうこと、この本に書いてあった ↓
堤未果『沈みゆく大国アメリカ』(2015/5/24)