オランダの「すべり坂」、ついに裁判所が家族による自殺幇助も容認

オランダ、Arnhem市の上訴裁判所は、5月13日、
2008年に致死量の毒物を手渡して99歳の母親の自殺を幇助したAlbert Heringa氏について
2013年の下級裁判所の判決を覆し、不起訴とした。

(13年の判決でも、自殺幇助で有罪となるも刑罰は科せられていない)

判決文は、
Heringa氏は、自殺幇助を禁じる法に従うか、それとも
母親の望む「苦痛のない穏やかで尊厳のある死」に手をかす「不文の道徳的義務」を取るか
の選択を迫られた、と。

同氏は「何もせずに、手をこまねいて母親の苦しみを見ていることができなかった」のであり、
そうしたとしたら生涯に渡って罪の意識に苦しむことになっただろう、とも。

安楽死推進派のロビー団体、AVVE のFiona Zonneveld氏は

This is a step in the direction we want to go,

私たちが望む方向への一歩前進です。

Many people who consider their lives completed want to be helped by their loved ones. We think that should be allowed.

自分はもう人生を十分に生きた(自分の人生は完結した)と考えている多くの人は
愛する人の手を借りて死にたいと望んでいます。それは認められるべきだと思います。


検察官らから声明が出ており、

Assisting suicide according to the conditions laid out in the euthanasia law is and remains, in the view of the prosecution office, exclusively a task for a doctor
Assisting suicide according to the conditions laid out in the euthanasia law is and remains, in the view of the prosecution office, exclusively a task for a doctor.

安楽死法に規定された条件に法って、自殺幇助は検察局の見解としては、現在もまたこれからも、医師のみに限定される行いである。




こういう事件の報道のたびに疑問なんだけれど、
人を殺せるだけの毒物を、どうやってこの人が手に入れたのかって、
そこのところが、どうして問題にならないんでしょう?

だって、自殺幇助以前に、
そういう毒物を入手し所持していることそのものが、違法行為ではないの?




なお、英国では2010年の自殺幇助起訴ガイドライン
事実上、近親者による自殺幇助が合法化されたものと捉えられている ↓
警察が「捜査しない」と判断する、英国「自殺幇助起訴ガイドライン」の“すべり坂”(2011/7/15)
検死官が近親者による自殺幇助は見て見ぬフリ(英)(2011/8/25)

で、去年、新しい公訴局長が議会に諮ることなく
そのガイドラインを医師にも広げて緩和したために、
障害者運動から無効化を求める訴訟が起こされている ↓
英国の自殺幇助起訴ガイドライン、緩和(2014/10/17)
自殺幇助ガイドライン改訂に障害当事者から法的チャレンジ(英)(2015/4/30)