英NHS、知的障害者の入院入所中の予期せぬ死亡事例の多くを調査せず

英国で知的障害者精神障害者への医療と入所型ケアを担うNHSトラストが
予期せぬ死亡事例の多くを調査していなかったり、件数を少なく報告しているなどの実態が判明し、
大きな問題になっています。以下、3つの記事から、かいつまんで。


Southern health NHS トラストは
Hampshire, Dorset, Wiltshire, Oxfordshire と Buckinghamshireで45000人に
地域ケア、精神障害者ケア、知的障害者ケア、社会ケアのサービスを提供している。

OxfordshireのSlade House(入所施設?)ユニットの風呂で
けいれんを起こして溺死した知的障害者のConnor Sparrowhawkさん(18)の事例を受け、

12月初め、
NHS Englandが監査企業に託して同トラストへの調査を行ったところ、

2011年4月から2015年3月までの間に
知的障害あるいは精神障害のある患者が入所(入院も?)中に死亡したケース、
10306件のうち、1454件が予期しない死亡事例だった。

そのうち、トラストは272件を重大インシデントと見なしたものの
実際に調査を必要とする重大インシデントに分類されたのは195件だった。
すなわち、調査されたのは7件に1件のみ。

精神障害のある成人患者では死亡件数の30%が調査されていたが、
知的障害のある成人のケースではわずか1%
精神障害のある65歳以上の高齢者では0.3%にとどまった。

知的障害のある患者の死亡平均年齢は56歳だった。
通常の寿命よりも7年も短い。

The report renewed concerns about institutional discrimination against disabled people, and led to calls for a national inquiry.

報告書は知的障害者に対する制度化された差別を懸念。全国調査を。


Mazars (Spitzibara注:調査会社) said there was a “failure of leadership” and a lack of transparency when unexpected deaths occurred. The trust was unable to show it had an effective system in place to learn from such deaths, it reported.

リーダーシップの欠落と、予期せぬ死亡事例での透明性の欠如。
予期せぬ死亡事例から学ぶというシステム整備ができていない。


ハント保健相は
適切な調査が行われれば予期せぬ死亡事例から学ぶことができるのに、
それをしなかったトラスト幹部の姿勢を批判し、

来年にはケアの質コミッションによって
全国のトラストで障害者の死亡ケースに調査が行われているかどうか調査する、と。

NHS幹部も、この問題への取り組みを表明。

こうした問題を受け、
ガーディアン紙が情報公開法に基づいて公開されたデータを調べたところ、
2011年以降に起こった知的障害のあるNHS入院患者の死亡事例1436件のうち
病院が調査したのはわずかに2009件であることが判明。

以前から、知的障害のある人が受けるケアは劣悪で
入院中に死ぬリスクが一般よりも高いことが懸念されてきたというのに
予期せぬ死亡とされたケース276件についても、
調査が行われたのは100件(36.2%)のみだった。

こうした死亡事例のすべてを調査していたのは47トラストのうち5トラストのみ。

Somerset Partnership NHS foundation trustと
Northamptonshire Healthcare NHS foundation trustと
Rotherham, Doncaster, and South Humber NHS trustは、
2011年以降それぞれ146件、63件、28件のこうした死亡事例のいずれについても
調査していなかった。

Leicestershire Partnership NHS trustは
116件の死亡事例のうち1件のみを調査。

Dorset Healthcare University NHS foundation trustは
97の死亡事例のうち2件のみを調査。

知的障害者を専門に診るNHSトラストではさらに事態は深刻で、
21のトラストで276件の死亡事例があり、
半数も調査していないトラストが11。
1例しか調査していないトラストも複数あった。

しかも、これらはNHSのみがサービス提供者である入院患者に関するデータで
施設入所の人は含まない。

A spokesperson for the Department of Health said NHS trusts should look into all unexpected deaths.“As the government’s response to Southern Health made clear, it is important that the NHS properly investigates unexpected deaths to learn lessons and improve care. That’s why the secretary of state has announced an investigation by the CQC into how deaths are investigated in all types of trusts.


保健相の広報官は、NHSトラストは予期せぬ死亡事例のすべてを調査すべきだと言った。

「Southern Health への政府の対応が明確に示しているように、
NHSがそれらから教訓を学びケアを改善するためには
予期せぬ死亡事例を適切に調査することが重要です。

あらゆるタイプのトラストで予期せぬ死亡事例がどのように調査されているかについて
ケアの質コミッションによる調査を行うと国務大臣(? 保健相の間違い?)が表明したのは
そのためです」


以下の最後の記事の末尾に言及ありますが、2013年に政府資金による調査で
英国では毎年1238人の知的障害児者が劣悪なケアが原因で死んでいる、という
結果が報告されています。 ↓
助かったはずの知的障害児者が医療差別で年間1238人も死んでいる(英)(2013/3/26)



そのメンキャップは、このたびの調査について、

Jan Tregelles, the chief executive of Mencap, said the failings were not just at Southern Health, but a wider problem across the NHS. “The government and NHS England must act immediately to address the failures of care that have seen so many people with a learning disability tragically lose their lives within the health system,” she said.