PASは「医療システムの機能不全に対する正当な怒りを、弱者切捨ての危険な施策へと誘導していく」

ブリタニー・メイナードさんの母親のスピーチとともに
議会にPAS合法化法案が提出されたCA州の
CA大学ホスピス緩和医療のフェロウという立場の女性が、
「自殺幇助はごく一部の助けにはなるが、もっと多くの人を危険に晒す」と題して
とても鋭い論考を書いている。

OR州やWA州で「尊厳死法」を利用してPASで死ぬ人は
それらの州で死んだ人の1%にも満たない。

その大半は、高学歴、富裕層の白人。

質の高い終末期医療が受けられて希望通りの在宅介護も受けられる恵まれた人たちが
自分の死の瞬間をいつにするかまできっちりコントロールしたいと
PASの合法化が説かれるが、

現実には大半の患者は
自分の死期が近づいていることを認めようとせず、
そのために、苦痛の多い治療や高価な治療にしがみついて
最期の時のQOLを下げてしまっていたりする。

死が早まる懸念から必要な薬まで飲まなかったり、
「諦める」ことと同一視してホスピスケアを受けないこともある。

社会の周縁に追いやられている人であればあるほど
こうした傾向が強く、社会経済的格差が無視できない。

そういう患者の多くが死にたい、早く死なせてほしいと口走る時、
丁寧に思いを探れば、その背景には別の願いが隠されていることが多い。

そこにPASを合法化してしまえば、
忙しい医師は思考停止し、患者の要望を額面どおりに受け止めて、
その背景にある思いを汲み取ることを止めてしまう。

そうして、医師と患者の信頼関係はさらに失われてしまう。

Though I understand the frustration that spurred this movement and believe strongly in respecting patient autonomy, I also believe that there are many things we can do to restore dignity to the dying process that do not involve lethal medications, such as reforming hospice care and being more thoughtful about end-of-life treatment.

この動き(CA州の法案提出と訴訟のこと)の原動力となったフラストレーションは分かるし、
患者の自律を尊重することの大切さも了解しているけれど、

同時にまた、
死のプロセスに尊厳を回復するためにできることは、
致死薬を持ち出さなくても沢山あるとも考えている。

例えば、ホスピス・ケアを改善すること。
そして、終末期医療についてもっとしっかり考えることなどだ。

Doctor-assisted suicide inappropriately channels a completely justified outrage against our broken system into a dangerous public policy that puts vulnerable people at risk.

医師幇助自殺は、
機能不全を起こしている我々の制度に対する、まったくもって正当な怒りを、
弱者をリスクに晒す危険な施策へと不当に誘導するものである。


Assisted suicide helps very few, endangers more
Laura Petrillo,
The Sactamento Bee, February 25, 2015