ケベックの高等裁、12月10日のAID法施行に「待った」

カナダの安楽死、医師幇助自殺をめぐる状況は
州レベルと連邦政府レベルが同時進行していてややこしいのですが、

ケベック州は昨年6月に州議会でAct Respecting End of Lifeという法律が成立し、
来週12月10日に施行とされており、
すでに医療専門職の職能団体から実施ガイドも出ています。



それに対して、連邦政府のレベルでは、
BC州のTaylor & Carter訴訟が連邦最高裁にまで行った判決が今年2月に、
連邦政府に対して1年間の期限を切って合法化に向けた法整備を命じました。



ただ、前政権が消極的だったのと11月に政権交代があったばかりのため、
現政権は期限の延長を求めるものと見られています。

そんな中で先週、連邦政府ケベック州政府に対して、
連邦政府の合法化予定を踏まえて州法の施行を見合わせるように要望し、
ケベック州がそれを蹴る、という展開がありました。

そんな中で、昨日1日火曜日に、
今度はケベック州高等裁判所が12月10日の同法の施行に待ったをかける、という新展開です。

先月、the Coalition of Physicians for Social Justice という医師グループが
この法案に反対して提訴し、州最高裁は先週、関係者らから意見を聴取していました。
そして火曜日に延期(stay)命令(injunction)が出されたもの。

以下の記事に引用されている判決文の一説は

It must be concluded that this is a flagrant and direct incompatibility
これは重大かつ直接的な齟齬(両立不可能性)であると結論されなければならない。


ケベック州法務相は上訴するといっています。




気になるのは、記事がいずれも例によって
ケベックの州法でPASが合法化されると誤解した表記をしていること。

ケベックの新法が合法化するのは、
冒頭にリンクした実施ガイドにもあるように
Medical aid in dyingという名称による安楽死です。

一方、カナダ連邦政府が求められている法整備は
少なくとも私が読み齧ってきた限りではPASのように思うのですが、
まだ検討委員会についても不透明なことが多くて、よく分かりません。

また今回のケベック最高裁の判決文にある incompatibilityが
安楽死と自殺幇助の区別をさしているのか、
医療職の使命との齟齬を言っているのかも、
よく分かりません。



もう一つ、気になるのは、今回の記事やその他の記事でも感じることとして、
2月6日の「期限」までに法整備が行われなくても、
その日が来ればカナダ全土でPASが解禁になるのだ、
むしろ法整備がされなければ無規制で行われるのだ、というトーンが、
メディアの報道にチラついていること。

カナダは本当に混沌としてきました。


【12月11日追記】
けっきょく、ケベック州当局が上訴し、
それを受けて最高裁が予定通りの施行を認めた模様です。
http://www.catholicregister.org/item/21436-quebec-appeals-court-rules-euthanasia-can-proceed-for-now