カナダ議会に子どもにも精神障害者にも認めるラディカルな答申が出る一方、法整備手前での特例第1号のALS患者が「医師幇助死」

昨年、カナダのケベック州安楽死を合法化する州法が施行となり、
今年1月に最初の安楽死者が報告されたことと、

それとは別途、カナダ連邦政府レベルでは
昨年2月にカナダ最高裁から命じられた1年以内の死ぬ権利法整備の期限に間に合わず、
6月までの猶予が認められ、

同時にその間に physician assisted dying、aid in dying を必要とする人は、
個別に裁判所の判断を求めることが認められたことについて、
1月に以下のエントリーで報告しました。



その続報、2つ。

ケベック州以外での猶予期間の特例として「死ぬ権利」を認められた
BC州アルベルタの第1例が報告されています

ALSの最終段階だった Sさんが
医師2人の help を受け、家族に見守られて亡くなった、とのこと。

Sさんは臨床心理士として精神病院で38年間働いたが、
2013年4月にALSと診断され、
ただ一人の家族である配偶者が介護していた。

2015年10月までは
the Calgary ALS and Motor Neuron Disease Clinic で治療を受けたが、
これ以上、進行を遅らせることはできないと分かって通院をやめた。

以下の記述を含む供述書と、医師らの意見書やカルテ、親友の手紙などが
2月16日、23日に提出され、29日に“AID”が認められた。

I am not suffering from anxiety or depression or fear of death. I would like to pass away peacefully and am hoping to have physician-assisted death soon. I do not wish to have continued suffering and to die of this illness by choking. I feel that my time has come to go in peace.


また、下のほうの記事は、合法化ロビー団体のみに取材するなど
偏りのある書き方になっていますが、そちらには以下のように、
Sさんが常時痛みに耐えていたが意識を鮮明にしておきたかったので
痛み止めはほとんど飲んでいなかった、という記述もあります。

Ms. S. is in “significant pain” requiring constant care. She can’t swallow liquids, and uses a gastric tube to pump water into her stomach. She has muscle cramps, aching joints, and pain in her shoulders and neck. She prefers to be alert, so takes little pain medication.


何よりも気になるのは、どの記事も(おそらくは判決文も)
doctor assisted death, physician assisted deathなど
「医師の幇助を受けて死ぬ」権利という文脈の文言で統一されており、
(上のほうの記事のタイトルでは physician-assisted passingも!)

いったいSさんへのhelpが積極的安楽死だったのか自殺幇助だったのか
まったく不明。

なお、記事によると、
ケベックでは1月の第1例の後、
すでに20人がassisted dying lawを利用して亡くなったとのこと。

こういう文言で統一されていくということは、
おそらくはカナダ全土でケベック州と同じく、
安楽死まで合法となったのだろうと推測します。




【3日追記】
このケースで、”AID”を主導したEllen Wiebe医師が、致死薬の入手に困難があったとしてBC州の薬剤師会はガイドラインを作るべきだとインタビューで語っている。
http://www.theglobeandmail.com/news/national/ellen-wiebe-is-the-doctor-seeking-a-smoother-path-to-assisted-death/article29006968/


【4日追記】同医師、薬剤師会の抵抗について語り、また看護師にも関与を認めるべきだとの主張を展開。
http://www.cbc.ca/news/canada/british-columbia/doctor-in-assisted-dying-case-wants-college-to-allow-nurses-to-help-1.3474910



一方、カナダ議会が立ち上げていた法整備のための委員会
The Special Joint Committee on Physician-Assisted Dyingから答申が出て、
その対象者要件の緩さに賛否の議論が渦巻いています。

具体的には、
法整備から3年後をメドに
「成熟した未成年mature minor」と呼ばれる未成年にも認めようとの提言。

grievous and irremediable medical conditions that cause enduring suffering that is intolerable to the individual があれば、
終末期でない人にまで、病院または自宅での、”AID’を認めている点。

その苦痛については「身体的なまたは心理的な」という要件とあって、
精神障害者にも認めている点。

先行き深刻な状態になったり、意思決定能力を失うことが見込まれる場合には
あらかじめのAIDリクエストが認められている点。

医師に良心による拒否を認めず、
自分がやりたくなければ、やってもいいという医師に紹介を義務付けている点。