【お勧め】Mencapのビデオ「歯医者へ行く」

知的障害者への医療差別に粘り強く取り組んでいる英国の障害者チャリティ、メンキャップが
2013年に知的障害のある人への配慮ある対応を求めて作ったビデオを以下のエントリーで紹介しましたが、



メンキャップは2010年に
「歯医者へ行く」と題した以下のビデオをYTにアップしていました ↓

Going to the dentist
Mencap, 2010/6/22


上にリンクした2013年のビデオが「悪い例」なのに対して、
こちらは「理想的な対応例」。比較してみても面白いかも。


「歯医者へ行く」は、
軽い知的障害のある女性クレアさんが、
数日前から時々痛む虫歯の治療のために歯科医へ行くという設定で、

知的障害のある人の歯科受診に、
なるほど、こういう対応をしてもらえればいいなぁ、と唸りそうな
見事な歯科医師の対応ぶりが描かれていきます。


まず最初に自己紹介し、看護師さんを紹介して
フレンドリーな雰囲気でリラックスさせようとする。

症状を聞き、
「歯医者さんで診てもらうのって、どんな感じですか?」
「緊張してます。怖いです」
「なにか特別に心配なことがあります?」
「注射が不安です。針が怖いので」
「わかりました。今日のところは歯の様子をまず見せてもらって、
どこがどんなふうに悪くなっているかを調べることにしましょう。
その上着は脱いだ方が楽かもしれませんね」

と、上着を脱ぐのを手伝う。

その後、診察台に座ったクレアさんに、
「今、私は手袋をしているところです。
これから椅子を倒して、口の中がよく見えるようにしますが、
そのまま横になって楽にしていていいですからね。
どうですか、だいじょうぶ?

これらが私が使う道具ですが、
これが鏡。ほら。見えますか、鏡ね。
これを口の中に入れて歯を見せてもらいますよ。
ほら、こんなふうに。

今度は、もうちょっと良く見えるように、風が出る器具を使います。
ほら、これね、こうやると風が出てくる。
ちょっと手を出してみて、ほら、風が出てくるでしょ。
これを口に入れて、ほら、パフッと出たでしょ。

……というふうに、
自分が今何をしてるか、
これから何をしようとしているか、逐一説明しながら行動。

その後、診察台を起こしてから、前に回って向かい合って座り、
麻酔をかけてドリルで削る必要があることを説明。

まず歯茎にクリームを塗ってしびれさせること、
十分にしびれてから、ちょっと注射をして、さらにしびれせることを
ゆっくり丁寧に易しい言葉で説明。

ドリルを使う時には
これが歯の中のばい菌をやっつけるために使うドリルね。
これが回るんだけど、大したことない、手を出してみて。
ほら、ちょっとくすぐったいくらいでしょ。

今度はもうちょっと早いドリルね。
今度は速いから手でやってみせられないけど、
ちょっと音を聞いてみますか、こんな感じ。大丈夫かな。
今度は水が出るから、看護師さんがこの器具で吸います。

看護師が器具を見せて、クレアさんの腕で実演。

3つ数える間だけやりますからね。
削っている間に、もし、やめてほしかったり、
なにか嫌なことがあったら、左手を上げてください。
すぐにやめますからね。

1,2、3と数える間だけ削ります。まずは、それだけね。
いいですか。始めますよ。口を開けて。
何かあったら手を挙げたら、すぐやめますからね。

などなど。

実際は、なかなか、こうスムーズにはいかないかもしれないけど、
この姿勢がやっぱり基本なんだなぁ、と言うことがよく分かる。

何をしているか、これから何をするのかを、易しい言葉で丁寧に説明、
あらかじめ実際に見せる、できれば前もって体験させる、
我慢が必要なことは時間を区切る、
合図ですぐにやめるなどの安心材料を作る、
一度に少しずつの説明と治療行為。

ほとんど黙らず、状況を説明し続ける医師。

ほんと、いいビデオと思います。

こんなに時間かけてやってられるかと思われそうだけど、
こういう対応だったら、だんだん安心して患者さんも緊張しなくなるし、
そうやって安心させてもらえれば、いずれ了解済みになっていくだろうし、
それは知的障害のある人だけじゃなくて、
子どもだって大人だって同じなんじゃないかなぁ。

YTへのコメントに「まさにプロフェッショナル」とあるのに、賛同。

歯科医学生さんの、歯科医院を怖くないところにしたい、というコメントにも
ああ、そういう人たちにこそ参照してほしいビデオだと思いました。


同じ日にMencapは「医者へ行く」と題したビデオもアップしているのですが、
こちらは、ちょっとイマイチでした ↓
https://www.youtube.com/watch?v=3rvCCEK3mic