「ナースの昔語り」シリーズ 3: 療育園LOVE

療育園LOVE


今から15~6年前の頃は、若い20代の看護師さんは、
成人病棟から療育園に異動すると、とっとと退職されていく方が少なくなかった気がします。

「だめー。生理的に受け付けない」とか
「看護師の仕事じゃないじゃん」とか。

利用者さんのそばにいたくないという思いの看護師が
残念ながら少なからずいたと思います。

そんな理由でいなくなった職員さんを懐かしむ気持ちは
さらさらありませんが、

そんな時代よりさらに利用者さんの年齢が15も16も上がった現在、

かつては可愛かった人もそれなりに、男前だった人もそれなりに、
中には良い方に変化をとげた方もおられるやもしれませんが、
昔のほうが当然フレッシュ感はあった。

しごく当然なことです。

今回、私は、またまた療育園に異動してきた時、
20代の看護師がけっこう多いのを見て、
かたっぱしから尋ねて回りました。

「あなたは、このような職場に看護師として働くことをどう思っているか」

一人くらいは「本当はいやなんですけどね」なんて、
答えが返ってくる覚悟をしていたにもかかわらず、

皆が皆、「不満はない。
むしろ、ここで働きたいと希望してきました」という返答ばかり。

そこで、しばし追跡調査を実施ーー。

しかし、皆、愛ある人ばかり。

この人たちがあの時代に存在していたらと想像すると恐いくらい、
皆、少なくとも私程度に「療育園LOVE」。

こんなことがありました。

いまや療育園を引っ張りあげる M看護師。
彼が勤め始めて2年くらいの時のことでしょうか。

一緒に夜勤をしていた時のことでした。

シンッと静かな時間がしばし流れていました。

彼が突然立ち上がり、あおいちゃんのもとへ。

異常を知らせるアラームは鳴りませんが、
彼があおいちゃんの異変を察知したのかと、私は、その後を追いました。

彼は青いチャンの顔に自分の顔をぐっと近づけました。

「んっ。やはりなにか異常があるのか……」

近づいていく私。

彼はあおいちゃんの耳元で
「うーん。あおいちゃん、かわいい」とささやいて、

それを見ていた私の横を、特に照れるでもなく通過し、
何事もなかったかのようにカルテ記録のために着席。

「ここはひとつ、今の行為を彼に確認しておかなければ」

今しがた私が目撃した動作について、問うてみました。

すると、
「え、そんなこと、してましたか?」と真顔の返答。

記憶にないとのこと。

「療育園LOVEは今ここまで来ているのか」と感動してしまいました。

そんな職員さんたちと一緒に仕事できることは、
やはり幸福だと感じます。