幹細胞ドナー候補となったきょうだいのトラウマ

以下の大変興味深い論文をいただいた。

幹細胞移植ドナー候補となったきょうだいに対するトラウマの視点からの心理的評価
東飛鳥, 小林明雪子, 小澤美和, 細谷良太,
子どもの心とからだ, 2013 May, Vol.22, No.1


要旨は

 小児がん患児に幹細胞移植が必要と判断されると、その兄弟姉妹(以下きょうだいと記す)はHLA適合率の高さからドナー候補に上げられることが多い。ドナーとなれば当然精神的・身体的負担がかかるため、ドナーとなる以前にきょうだいはどの程度の心理的負担を抱えているかを評価することが当研究の目的である。これまでの評価方法に加えて、患児が病気になったことがきょうだいにとってのトラウマ体験に相当するととらえ、posttraumatic stress disorder reaction index (PTSD-RI)を用いた評価を試みたのでその結果を報告する。患児が入院してからきょうだいがドナー候補となるまでの期間に、14例を対象に評価を行ったところ、7例は中等度以上のトラウマ症状を有することが判明し、そのうち2例はPTSDと診断される重度の症状を呈していることが判明した。


「おわりに」から一部を以下に。

 今回の対象はドナー候補となったきょうだいであったが、このうち9例が幹細胞移植ドナーとなった。術前検査や幹細胞採取の入院、採取後の外来通院、あるいは点滴や、採取後の痛みを考えると、その精神的、身体的負担は測りきれず、さらなるトラウマ体験となることは自明である。実際に骨髄提供後に登校困難や起床困難を訴える対象者もあった。