処刑に参加し、息子を殺した男の顔面すっぱたいて許した両親(イラン)

「目には目を」のイランの処刑は公開で行われ、
殺人犯の絞首刑には被害者遺族が参加し、
囚人の乗った椅子をはらう部分を担当するという。

で、この日
7年前に18歳の息子Abdollahさんを殺されたHosseinzadeh夫妻は
犯人であるBalalの処刑の場にいた。

目隠しをされたBalalの首に、輪縄がかけられる。

と、その次の瞬間、
Abdollahさんの母親がBalalに歩み寄ったかと思うと、その顔面をすっぱたいた。

そして、息子を殺した犯人を許した。

記事には、
母親がBalalの顔面をすっぱたいた直後の写真と、
父親がBalalの輪縄をはずしてやっている写真(Balalは号泣しているように見える)

そして、その後で、
泣き崩れるAbdollahさんの母親の肩を
Balalの母親が抱きながら、やはり号泣している写真。

この3日前に母親の夢にAbdollahさんが出てきて、
以前に事故で亡くなった弟と一緒にいるのは良い場所だから、
報復はしないように、と告げた。

それを受けて両親は話し合っていたのだという。

ただし遺族に権限があるのは死刑の免除までで
刑期まで変えることはできないとのこと。

(遺族さえ許せば死刑中止というのも「目には目を」なんだなぁ、と思うと同時に
最近よく日本でも言われる「遺族感情に配慮」というのも
改めて考えてみたら「目には目を」ではあるなぁ、と思ったりも)

ちなみにイランは中国に次いで2番目に死刑の多い国。

アムネスティのデータでは、
今年に入って選集までですでに199人が処刑されたとされる。

去年の政府の公式発表では369人とされるが、
アムネスティは実際は700人に迫るのでは、と見ている。

イランでは、2010年に
姦淫の疑いで99回の鞭打ちを受けた女性に公開投石処刑が宣告されて
国際的な非難を浴びたこともあった。
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/61356541.html



数日前に読んだ森達也『A3 下』に出てきた、
ピースフル・トゥモロウズ(アメリカの対テロ戦争に反対する9・11の被害者遺族の会)を
思い出した。

ピースフル・トゥモロウズのサイトはこちら ⇒ http://peacefultomorrows.org/

そこに集まっているのは
ルワンダの虐殺で家族を失った男性、
北オセチアの学校占拠事件で子どもを失った母親、
米軍によるアフガン空爆で家族を失った女性などなど。

自爆テロで娘を亡くしたイスラエルの女性と
イスラエル軍の砲撃で息子を亡くしたパレスチナの女性とが
抱き合って泣いていたりする。

森氏は次のように書く。

 でも報復を否定する彼らは少数派だ。彼らの思いとは別に、憎悪と報復は連鎖する。連鎖し続ける。何度も何度も反転しながら。決して終わらない。……
(p.75)


社会の空気によって見すごされたままになっている
オウム裁判の理不尽、違法性そのものについて書かれた終盤の以下の下りも、
上の2行と響きあっている。

 冷静に考えればわかること。でも冷静な声は届かない。小さいからだ。そして少ないからだ。逆上した声は届く。広がる。大きいからだ。そして多いからだ。
(p.331)



「33個めの石」とは、アマゾンの内容紹介から抜くと、

2007年、米国・バージニア工科大学で銃乱射事件が起きた。
キャンパスには犠牲者を悼む32個の石が置かれたが、人知れず石を加えた学生がいた。
33個めの石。それは自殺した犯人の追悼である。
石はだれかに持ち去られた。
学生はふたたび石を置いた。それもまた、持ち去られた。
すると、別のだれかが新しい石を置いた。
――私たちにとっての33個めの石とは?