在宅重症心身障害児者の介護者に関するデータ整理

訳あって個人的に必要となり、
兼ねて気になっていた在宅重症児者の介護者に関するデータを
ざっと目についたものだけですが、取りまとめてみました。


介護保険情報』2016年8月号の
(株)日本在宅ケア教育研究所 代表取締役研究所所長 内田恵美子さんによる
連載「訪問看護の現場から」第10回「重度障害児の訪問看護


訪問看護の質の確保と安全なサービス提供に関する調査研究事業~訪問看護ステーションのサービス提要体制に着目して~報告書」(平成26年3月 一般社団法人全国訪問看護事業協会・平成25年度厚生労働省老人保健健康増進等事業)によると、

小児の訪問看護を実施している訪問看護ステーションは約30%で、
訪問実数1~5人が84%を占めており、
普遍化していないのが実態です。
(P. 64)


 毎日必要とする医療処置は表2のとおりで、多くの処置管理が母親によってなされバーンアウト寸前です。
(p. 64)


表2 必要としている医療処置(複数回答 N=31名)

呼吸管理
吸入          25.8%
吸引          45.2%
気管内挿管部ケア    29.0%
酸素管理        16.1%
呼吸器管理・気切型   19.4%
呼吸器管理・NIPPV 3.2%

栄養・食事
中心静脈栄養       3.2%
胃ろう・経鼻栄養     51.6%
腸ろう      6.5%
経口・全介助       29.0%

排泄
膀胱留置・導尿    6.5%




医療的ケアを必要としているのは約4割。

主たる介護者は母親(77.6%)と父親(13.7%)で約9割を占め、
40~50代が中心であり、今後、高齢カを迎えていく年齢層。

主たる介護者の約半数が5時間以下の睡眠時間。
4時間以下が 17.6%
5時間が 28.9%

従たる介護者がいない世帯が約4割で、
主たる介護者に負担が集中している。



医療的ケアを必要としているのは
273人のうち116人で、約4割。

主たる介護者は
母親が79%。
父親が12%。

主たる介護者の年齢は
40代が29%。
50代が28%。
60代が19%。

主たる介護者の平均睡眠時間は

260人中
99人が6時間。
78人が5時間。
25人が4時間以下。

主たる介護者以外に介護者がいないケースが約半数。



主たる介護者の健康状態として、

腰痛        74.0%
慢性疲労       58.3% 
肩痛       53.7%
慢性睡眠不足     47.1%
高齢による体力減退  27.6%



主たる介護者は
97%が母親。父親が14%。

主たる介護者の年齢は、
40代が40%。
50代が24%。
60歳以上が13%。

介護者の睡眠時間は、
4,5時間が55%。
6時間以上は37%だが、
いずれも、細切れで寝た気がしない、という人も。
また3時間以下の人も10人。

介護者の体調は
時々不調が60%で、
最も多いのは「肩・首・腰・膝などの痛み」
次いで「寝不足・眠い・運転中不安」


千葉市の平成25年の調査
(特に医療的ケアを必要とする人のみを抽出)

主たる介護者は
母のみが93.8%。
父と母が6.3%。

主たる介護者の年齢は
50代以降が39.1%。

また本人の年齢と介護継続年数はほぼリンクしており、
生まれてから、同一の介護者が介護をし続けている状況である。

主たる介護者が何らかの理由によってケアを行えない場合に
代わりにケアを依頼する相手先は
同居の家族が         51.6%。 
短期入所が          51.6%。
「依頼できる相手がいない」  20.3%。

主たる介護者が丸一日介護から離れることができた直近の日は
「1年以上前」が            26.6%。
「介護を始めてから休めていない」が 21.9%。
半数近くが、1年以上、介護から丸1日離れられるような休息を取れていない。

短期入所について
67.2%が月に1回程度の利用を希望しているものの、
実際に利用できているのは15.6%であり、
数ヶ月に1回以上の間隔での利用が実際には5割を超えている。

1日の間に介護から離れることのできる時間は、
3時間以上が       68.8%
1~2時間が 14.1%
「ほとんどない」が    14.1%


愛知県下(名古屋市をのぞく)重症心身障害児者の実態調査

平成17年度調査では

主たる介護者は
母親 93%。父親2%。

主たる介護者の平均年齢は
43歳。

平成26年度調査では
主たる介護者は
母親が89%。 父親が4%。

平均年齢は53歳。

いずれの調査でも、
介護者が介護できないときの対応は
17年度で33%、26年度で34%が短期入所利用と回答。

ただし、愛知県こばと学園園長の麻生幸三郎医師によると、
重症児者は介護者に完全に依存して暮らしており、
施設職員といえど、その介護者のソフトウェアをすべて学習することは不可能なため、
短期入所では重症児者にとって生活環境の激変と感じられ、事故が起きやすい。

また人工呼吸器管理が必要なケースは
在宅の重症心身障害児者のうち、
平成17年度の調査で2.6%。
平成26年度の調査では5.9%。


⑧ 2016年6月の小児神経学会のシンポジウム9での
 熊本大学の松葉佐正先生の発表によると、

平成18年の北海道の在宅重症児の介護者へのアンケート調査(平元 H18)で、
介護者(母親)の年齢は
50~59歳が46%。
40~49歳が23.5%。
60~69歳が16.7%。

介護期間は在宅重症児者の年齢とほぼ同じく、
19~29年が47%。
30年以上が17%。
7~12年が10.8%。

1日の介護時間は
12時間以上が76.5%。
8時間以下が 11.8%。
9~12時間が11.8%。

なお、
現代日本の家族変動 -第4回全国家庭動向調査―(2008年社会保障・人口問題基本調査)」から、

表「理想と考える人生経路別有配偶者女子数」では「理想のライフコース」として

6870人中
1922人が「出産退職し、子どもが手を離れたら再び働く」と回答。
1092人が「結婚や子どもの成長に関係なく、ずっと働き続ける」と回答。

表 「現実にたどりそうな人生経路別有配偶者女子数」では「現実のライフコース」として、

6870人中
1505人が「結婚や子どもの成長に関係なく、ずっと働き続ける」と回答。
1432人が「出産退職し、子どもが手を離れたら再び働く」と回答。
1273人が「結婚退職し、出産後子どもが手を離れたら再び働く」と回答。

松葉佐先生は、
在宅重症児の母親の約8割が1日に12時間以上の介護を担っているとの
上記のデータとこれらのライフコースのデータを比べて、
在宅重症児者の母親は仕事を続けたくても
諦めたり辞めざるを得なくなっている、と指摘。



【9月6日追記】
徳島県の調査結果が出ていました。
重症心身障害児の保護者27%が介護離職 県がアンケート 
http://www.topics.or.jp/localNews/news/2016/08/2016_14725337741853.html