NZの8歳少女に“アシュリー療法”

いずれ、こうなっていくのだろうということは予想していましたが、
現実になってしまうと、やっぱり腹の底から無念。


NZの重症心身障害のある少女に“アシュリー療法”が行われたことが
TVで報じられて論争に。

Charley Hooperさんは現在8歳。

4歳の時に韓国でホルモン大量療法を始め、
帰国後も3年間、Paul Hofman医師(小児分泌専門医)がモニター。
(ということは帰国後も3年間に渡ってホルモンを投与したということ?)

その後、7歳の去年、
オークランドStarship病院で子宮を摘出。

親も担当医もメディアも、言っていることは
2007年のアシュリー事件の時そのままで、
なんか、もう目にするだけでも、うんざりなんだけれど、

例えば親は、

A child like this, a childlike Charley is better off small rather than big.

We didn't do this to Charley, we did it for Charley.

Mark and I were like Oh my God, this is amazing. Imagine if we could do this and always be able to carry her like the new-born baby her brain will always be.

I'm damned proud of what we've done I'm incredibly proud of what we've managed to achieve for our little girl.


中身が赤ちゃんなんだから、体が小さい方が幸せ。
愛情から本人のためにやったこと。
アシュリー事件で、ずっと赤ちゃんみたいに連れ歩けるなら、それってすごい、と。
だって、この子の頭は生まれたての赤ちゃんのままなんだから。
これだけのことを娘にしてやれた自分たちを誇りに思ってます。

主治医は、

The use of high dose oestrogen to make the child smaller has justification certainly in the context of this family they wanted to able to look after the child for longer.

Even among my colleagues there was dissension, Some people said it was an appropriate thing to do, others didn't.


こういうケースではホルモン大量療法は正当化されている、というのは
アシュリー事件での主治医らの議論のことを言っているのでしょうが、

同僚医師の間でも意見は分かれている、とも。


障害者運動からの批判は、
IHC(?)のTrish Grantさんの

denying Charley the chance to be a sexually mature, fully grown woman is a breach of her human rights.

It worries me that the people the medical people making these decisions have no deep or current understanding of disability rights.


性的に成熟した女性に成長することを否定するのは、チャーリーの人権の侵害。

こうした決定をしてしまう人たち、医療職は
障害者の権利についての考え方を、深く分かっていないし、
また最近の考え方もわかっていないのだということが懸念される。

(いや、分かっていないのは障害者の権利問題だけでなくて、
重症障害児者の現実の姿そのものだと思う)


メディアの基本認識もアシュリー事件のまんま、
擁護路線で記事を書いている。

Eight year old Charley Hooper has the mind of a baby, the body of a young girl - and that's the way it will always be.



重症障害のある人たちを「赤ちゃんと同じ」と考えるのは、
いいかげんにやめましょうよ。

それが何よりの人権侵害だわ。

だいたい、「この子はずっと新生児の脳のまま」って、
そんなのありえんだろーと思うんですけど、
科学的視点からいって、どーなんすか?

重い障害のある8歳は、重い障害のある8歳です。

重い障害があって障害のない8歳とはいろいろと違っているけれど、
それでも「赤ちゃん」でも「赤ちゃんと同じ」でもなく、
あくまでも重い障害とともに8年間さまざまな体験を経て生きてきた8歳です。



その後、こうした動きについて取りまとめて書いた記事がこちら ↓
「“アシュリー療法”ついに一般化か」書きました(2012/6/3)

すっかり忘れていたのですが、
この時に、ピーター・シンガー
「乳児は可愛いが尊厳ある存在ではない。
これは大きな身体のまま赤ん坊の知的レベルに留まる高齢者でも同じことだ」と
重大な発言をしている。