Not Dead Yet と Second Thoughts から Byock医師への賛同声明

直前エントリーで取り上げた、Byock医師は
Maynardさんのケースへの懸念の表明に留まらず、
彼女のビデオ(C&Cの作成によるもの)でPAS合法化議論が沸騰したことから、
様々な番組に登場してはC&Cの会長であるBarbara Cooms Lee氏と論争するなど、
PAS合法化そのものに懸念を表明したために、
世論の非難の的となっている模様。

それに対して、
Not Dead YetとSecond Thoughts とが連名で
賛同の声明を出しています。

それによると、
Byock医師の指摘とは

・重病患者、死に瀕した患者のニーズに応えられていない医療制度こそが問題。
・医師に、新たな「治療」として自殺のための薬を処方する役割を負わせることの危険。
・利益重視の医療制度に安価な「治療」としてPASを導入することの危険。
・死に瀕した患者に、患者中心の良質な医療を考えることの必要。
・終末期の対象者が障害者へと拡大されていくことへの障害者の懸念の妥当性。


また、この声明でNot Dead YetのCEOのDian Colemanが指摘していることとして

・Barbara Cooms Leeらは終末期を要件とするオレゴン式の法律の採用を謳う一方で、
 メディアでは将来的には認知症患者への拡大も視野に入れると発言をしている。

これについてエントリーはいろいろありますが、たとえば ↓
四肢マヒの議員が提出するカナダのPAS合法化法案と、そのダブスタぶり(2014/3/28)

・C&Cが終末期ではない人たちにVSED(自発的飲食停止)を尊厳ある死に方として推奨し、
 家族と医師らにも協力するよう説いており、
 現在のメディアでの合法化議論の範疇を越えた活動をしている。



Second ThoughtsのディレクターのJohn Kellyからは、

・障害のある人が虐待にあう確率は障害のない人の2~4倍。
・高齢者虐待の急増についても、その加害者の多くが家族や介護者であることも周知されていない。
・PAS合法化は、医療の問題に留まらず、これらの社会問題の文脈のうちにある。
オレゴン尊厳死法にも、実際の法的要件が厳格に守られていない、
 致死薬を飲む場に医療職の同席しておらず自分の意思で飲んだか不明など、
 問題はあり、Barbara Coombs Leeが言うような「透明性」は確保されていない。

特に昨日のエントリーに照らして印象的なのは、ここ ↓

Assisted suicide laws may appear to offer patient rights, but their actual provisions grant blanket legal immunity to physicians and other involved participants.

自殺幇助法は患者の権利を提供するように見えるかもしれないが、実際にはこうした法が提供するのは医師やその他、自殺幇助に関与する人への包括的な法的免責である。

それから、最後の以下の部分。

Legalization of assisted suicide often looks acceptable when the focus is solely on an individual. However, not every terminal prognosis is correct, not everyone's doctors know how to deliver expert palliative care, and not everyone has a loving husband and family. A closer examination of the issue reveals the immense harm legalization poses to vulnerable people as well as society as a whole.

自殺幇助の合法化は個人の問題としてのみ考えれば許容できそうに思えたちだが、終末期とする診断が常に正しいとは限らないし、誰もが専門的な緩和ケアの方法を身につけている医師に恵まれるわけでもなく、またすべての人が愛情ある夫や家族に恵まれているわけではない。問題を詳細に検討すれば、合法化は社会全体にも弱者にも大きな害をもたらすことが分かる。

"Assisted suicide legislation was rejected this year in Massachusetts, New Hampshire, Connecticut and New Jersey due to bipartisan opposition from a broad coalition of disability rights organizations, medical professionals and associations, palliative care specialists, hospice workers and faith-based organizations."

今年、マサチューセッツ州ニューハンプシャー州コネチカット州、ニュージャージ州で自殺幇助合法化法案は否決されたが、それは障害者の権利擁護団体、医療専門職や医学会、緩和ケア専門医、ホスピスの関係者、宗教団体が広く連携した超党派の反対運動によるものだった。