最高裁がPASの権利を認めたカナダで、幇助自殺者からの臓器提供をめぐる議論

十分に予測されたことだけれど、

医師幇助自殺は憲法で保障された権利だと最高裁が認め、
議会に対して1年以内の法改正が命じられているカナダで、
医師幇助自殺者からの臓器提供が議論になっている。



この記事に書かれているカナダの移植医療関係者らのコメントは
一様にPAS自殺者からの臓器提供の倫理問題の複雑さを前面に出して、
慎重論を説いているように見えるけれど、

以下の、
the University Health Networkの他臓器移植プログラムのディレクターである
Atul Humar医師の発言に伺えるように、

この論理が逆転して
「十分なセーフガードさえあればよい。
むしろ、やらないことは本人意思の不尊重になる」という主張へと
いつでも翻る用意があることが明らか。

If we were ever to consider this type of practice, all the decisions around assisted death should be kept separate from the discussions around organ donation,” he said. “And that whole piece should be kept separate from the transplant group and the transplant physicians.”

However, “My own thoughts on it are that we should always make all efforts we can to respect the patient’s wishes.

“If one of those wishes is to be an organ donor, we would try, as we would for any end-of-life situation, to respect that wish,” he said.



ちなみに、ベルギーの「安楽死後臓器提供」]に関する続報が
この記事の中に久しぶりに出てきている。



それによると、
ベルギーで最初の安楽死ドナーからの肺移植を移植医が報告したのは2011年。
2人のMS患者からの提供で、一人は神経障害、もう一人には精神障害があった。

2人とも、安楽死希望が認められた後で臓器提供の意思を
明確に、自発的に表明した。

University Hospitals LeuvenのDirk van Raemdonck医師によると、
これまで17人の安楽死後臓器提供ドナーから肺、腎臓、肝臓が提供された
レシピエントは全員、経過は良好とのことで、それについては
来週ブリュッセルで開催されるベルギー移植学会の年次大会で発表される。

また、この記事の末尾で紹介されているのは、
スイスでPAS者からの臓器提供を認めるべきだと説いている
Basel大学の生命倫理学者、David Shawの主張。

現在でも、幇助を受けずに自殺した人からの臓器提供は行われているのだから、

自らの手で非常に悲しく激しい自殺をした人々からの臓器をとって、
じっくり計画して幇助を受けて死ぬ人では臓器摘出を拒否するというのは、
自殺幇助を決断できるだけの意思決定能力があるというのに、おかしい。


Shawの主張については、こちらに ↓
(ベルギーの安楽死後臓器提供その他についてもリンク)
スイスの「バイオ医療倫理学者」が幇助自殺者からの臓器提供を提唱(2014/12/16)