くるくる寿司

こちらのエントリーで書いた予定の通り、

暖かくなってきたので、この週末は散歩を兼ね、
介護食のちらし寿司と自家製「とろみ和風だし」をもって
近所のくるくる寿司へ行ってきました。

お店には車イスの人向けのテーブル席が2つあります。
左側の席に入れるように仕切りが外せるようになった席と、
右側に入れるように仕切りが外せるようになった席とあり、
食事介助はその人その人で異なっているので、
左右が選べるのはとてもありがたい配慮。

ただ海の車イスには大きなテーブルがついていて、そのぶん距離が遠くなるので、
どうしても母は立ったままの介助になり、
ちょっと目立ってしまうのですが、まぁ、仕方がない。
食べさせるのに集中しているから、こっちはあんまりに気ならないし。
(気になった他のお客さんには、ごめんなさい)

海は今回が2度目です。

まず、手始めにネギとろ軍艦。
海苔を外したものを皿でつぶせば、ほぼOKなんだけど、
ごはんとの配分によっては、とろの脂分がちょっと足りないので、
そこは「とろみ出汁」を追加しながら、これを2貫。

たまに海苔のきれっぱしも口に入れてやるけど、ちょっとムセやすい。

もちろん、持参の介護食のちらし寿司も
「とろみ出汁」をたまに追加しながら順調に食べ進める。
(介護食のごはんは酵素で加工したもので、ふわふわホロホロのちょっと不思議な食感)

とろサーモンの握りは、サーモンを父親がすり鉢ですりつぶし、
それを母がごはんと「とろみ和風だし」と混ぜて、1貫。

大好きな茶碗蒸しもオーダー。
意外に大きいが、寿司の合間に順調に食べ進める。

そこらあたりで、父親がオーダーした、はまぐりラーメンが届くと、
ラーメン好きの海は「わ! ラーメン、あたしも食べる!」と目を輝かせ、
小鉢にとりわけてもらったものを1本ずつ、しかし着実に片付けていく。

最後につるつるっとすするのは、昔から上手です。

次に、かにマヨ軍艦の海苔を外したものをつぶして、2貫。
これはマヨネーズの油脂がなめらかにしてくれるので「とろみ出汁」は不用。

(こういうのは、こちらで書いた「黒田式ソフト食」の基本原理の応用)

このころには親の方はもう満腹なのだけど、
海は嬉しそーな顔して「まだ食べる」と主張するので、
シーチキンサラダ軍艦の海苔を外したものをつぶして、1貫。
これもマヨネーズが使われているので、ほんのちょっとの「とろみ出汁」追加でOK。

このあたりで、茶碗蒸しも介護食のちらし寿司も完食となったし、
そろそろ、いいのではないかと親は思うものの、海は「まだ食べたい」。

「じゃぁ、最後にもう一ついく?
あんたが食べたいものが廻ってきたら、
とってあげるけん、言いんさい」
「ハ」

海は廻ってくる寿司をじいーっと見つめる。

イカ、えんがわ、ゆず塩はまち、まぐろ……
そして次に4つ並んでぞろぞろと登場したものを見て、海の眼がギラリ。

「え? あんた、チョコレート・ケーキ食べるの? 寿司じゃなかったの?」
「ハ!」
「本当に食べるん? じゃぁ、とろうか? とるよ?」
「ハ!」

親としては、デザートは帰り道のコンビニで買ったほうが安くて美味しいという
腹づもりでいたのですが、この流れではとらないわけにもいかない。

「えー、あんたー、ここでデザートを食べるん?」と予定狂いをかこちつ、
でも、まぁ、こういうのこそが「くるくる寿司」の醍醐味だよね、と
急いでチョコレート・ケーキを一皿、レーンから取る。

海がめっちゃハッピーな顔で、
口の中を真っ黒にして、ばくばく食すのを見れば、
「じゃぁ、親も何かデザートを」ということになり、
2人でシェアすべく「和菓子三種盛り」を一皿オーダー。

そして、海が満足そうな顔でケーキを完食したところへ、
景気のよい音楽と共にシュポシュポと「和菓子三種盛り」が到着すると、

「キャーーッ」
店中にとどろきわたる大歓声。

「え? あんた、まだ食べる気?」
「うんっ! 食べる! 食べる!」

母のちっこい桜餅から、
ほんのぽっちりずつ約3分の1をせしめて、
「じゃぁ、帰ろうか」と父が「会計」を押す。

が、しかし。

海はまだ未練がましく、レーンをじいーっと見ている。
いまにも寿司の皿に手を伸ばさんばかりに。

「あ、そういえば、この子、まだ“ごちそうさま”しとらんわ」
「あちゃ。でも会計、もう来るが?」

「あんた、まさか、まだ食べたいってか?」
「ハ」

「いやー、もうダメ」
「デザート食べた人は、もうお終い!」と2人の親から同時に言われて、
ちょっとひるんだ海に、

「海、また今度こよーや」と、父親の優しい一声。

「ハ」と返事した海は、
自分から両手を合わせて「ごちそうさま」をしたのでありました。

はー、満足。