論文「ヒト・パピローマウィルス・ワクチン関連神経免疫異常症候群の臨床的総括と病態の考察」

とても重要な論文をいただきました。
Aさん、ありがとうございます。


ヒト・パピローマゥィルス・ワクチン関連神経免疫異常症候群の臨床的総括と病態の考察」
横田俊平(東京医科大学医学総合研究所小児難病部門長/横浜市立大学医学部小児科)
黒岩義之(帝京大学医学部附属溝口病院脳卒中センター長/日本自律神経学会理事長)
中村郁朗(一般財団法人難病治療研究振興財団事務局長)
中島利博(東京医科大学医学総合研究所運動器科学研究部門教授)
西岡久寿樹(東京医科大学医学総合研究所所長/一般財団法人難病治療研究振興財団代表理事)
日本医事新報 No. 4758 2015.7.4


4月24日のエントリーで紹介した斎藤貴男『子宮頸がんワクチン事件』で紹介されていた
2014年12月10日の日本医師会、日本医学会合同シンポ「子宮頸がんワクチンについて考える」において
西岡久寿樹医師らが発表した副反応に関する研究の詳細報告。


HPVワクチン接種後に起こっている多様な症状を伴う病態を
これまでになかった新しい疾患として捉え、対応する必要があるとして
HANS(ヒト・パピローマゥィルス・ワクチン関連神経免疫異常症候群)という新概念を提唱する。


著者らは、
医療機関などから報告された副反応報告2475例の中で重篤例とされた1231例の中から
厚労相科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討会が617例のみを重篤例とし、
その中から176例のみを検討の対象とした上で、
その原因を「心身の反応」によるものと結論付けたことに疑問を持ち、

難病財団に、
病理学、ワクチン研究、免疫学、精神科、リウマチ科、神経内科、神経生理学、小児科
などからなる検証チームを作って、
2475例の症状をデータベース化し、詳細に検討した。

また、検証チーム・メンバーの所属先の医療機関にも
HPVワクチン接種後に一定期間を経てさまざまな症状を呈する症例が集積してきたので、
カンファレンスを開いて基準案を作成。

それに基づいて診断をおこない、集積した104例を登録して、検討したところ、
ここで見られる症状は、厚労相に報告があった接種後の急性期症状とは様相が異なっていた。

一方、2012年からの半年間で
横浜市立大学小児科リウマチ・膠原病繊維筋痛症外来に、
ワクチン接種後に多様な症状を重層して呈する症例が10例集まっており、

これらの症状の発現はワクチン接種後約6カ月の間に次第に重層化し, 改善と増悪を繰り返す傾向にあつた。すなわち,ワクチン接種後28日以内には収まりきらない症状をとらえていると考えられ、多くのHANS患者が同じ臨床経過をたどっていることが明らかにされた。

上記の104例も、この10例と症状が似通っていた。

国内の他の施設からも、
HPVワクチン接種後の神経症状に関する研究報告があり、

海外でもデンマークのBrinthらが75例の解析結果を報告し、
HPVワクチンとの関連性が強く疑われると結論付けた。

さらにデンマーク、英国、オーストラリアの保健機関から
副反応の詳細が公表されており、
副反応の内容が日本と極めて類似していること、
CervavixとGardasilとの間で副反応の種類に大きな違いは認められないことが
判明している。

これらの研究結果を踏まえて、著者らは
運動系、感覚系、自律神経・内分泌系、認知・情動系と極めて多彩な症状を呈する病像が
一人の患者に重層的に生じていることから、

「心身反応」や「疼痛」に症状を絞るのは不適切であるとし、
以下のように述べる。

最も大切なことは、多彩な副反応を既知の疾患に当てはめることではなく、「新しい症候群」としてとらえ、その共通項に「HPVワクチン接種」が存在していることを明確にすることである。

そして、これらの系を統合的にコントロールする
視床下部」の病変を核とした神経ネットワーク障害の可能性という仮説に立ち、

HANSという一つの症候群として捉え、対処すべきだと主張。

結論は以下。

既にわが国では約330万人の女児がHPVワクチン接種を受けているが, デンマークや英国の副反応症例数から推定すると, わが国の症例数は厚生労働省に報告されている2475例よりかなり多くなる可能性が高い。 このようなHPVワクチンの接種を機会に発症した種々の副反応は, 昭和24年以来接種されてきたどのワクチンの副反応にもみられない特異なものである。症候学的には新規疾患と呼べるもので, その責任病巣は特異な臨床経過から視床下部と推察される。予防接種に用いられるワクチン成分そのものが視床下部病変を形成するのか, Pandemrix の経験に鑑みて, ワクチン成分とHLA class Ⅱ分子の関わる免疫学的な機序が視床下部病変を誘導するのかといった詳細な研究が現在進行中である。

患者救済のためにも, 日本医師会・日本医学会が提案したHPVワクチン副反応診療ガイドラインの作成を早急に行い, 全国のHANS患者の診断や治療の方針を確立することが最も緊急の課題である。



なお、結論の中に出てくる Pandemrixは
ラクソ製の新型(豚)インフルエンザ(N1H1)ワクチン。

厚労相医薬食品局安全対策課から平成23年2月28日に
以下の文書が出ている。


ちなみにGSKは、サーバリクスの製造販売元。




パンデムリックスも電子タバコもそうなんだけど、
海外で副作用やリスクが問題視されると、
もちろん日本でも市場から消えてはいく。

でも日本では大きく報道されたり
素人も目にして記憶に残るような形で議論されるんじゃなくて、
「いつのまにか気がついたら」という形で消えていく……という気がする。