英国最大の精子バンクの優生思想

前から取りざたされていたけど、
英国最大の精子バンク、the London Sperm Bankが
精子提供を受け付けない病気と障害リストを作っていることについて、
ついにHFEA(ヒト受精・胚機構)の調査が入った模様。

リストに含まれているのは、
ADD、ADHD自閉症アスペルガー症候群、識字障害、
重症の強迫性障害色盲嚢胞性線維症アルツハイマー病、
てんかんパーキンソン病、運動障害失行。

もう回収されて使われていないが、以前の同バンクのパンフには
以下のように書かれていたとのこと。

(一定の病気や障害のある男性は除外されます)

それは、生まれてくる子どもたちに、
よくある遺伝病や奇形が伝わるリスクを最小化するためです。


ただ、私は
オックスフォード大を卒業して、ソフトウエアのエンジニアとして働いている30歳の男性が
精子提供を拒否されて、それを批判している以下の発言には
大いにひっかかるものを感じる。

バンクの人たちには、これは優生思想だと言ってやりましたよ。
しかもよい優生思想ですらない、ってね。

だって、リチャード・ブランソンとかアルバート・アインシュタイン
拒否するのかってことでしょ。

世の中一般の人たちとは別の考え方をするイノバティブな人間は必要なんですよ。
識字障害のある人たちは我々の社会に大きな貢献をしているんですから。


その違和感がどの辺りにあるかというのは、
2009年の以下のエントリーで書いたような辺り ↓
自閉症の出生前診断に「でも数学的才能も一緒に抹殺されるんだぞ」という反論(2009/1/12)
「ビル・ゲイツが欲しい人?」Caplanの自閉症遺伝子診断「滑り坂」論(2009/1/13)




「よい優生思想」と「よくない優生思想」があるんだな、この人の中では。

そして、たぶん、「よい優生思想」というのは
「障害や病気のために、一切まったく社会の役に立てない人が生まれないようにする」ことであり、

「よくない優生思想」とは、
「障害や病気があっても、その特定を生かして社会の役に立てるような人まで排除する」ような
「行き過ぎた優生思想」のことなんだろうな。