今日のボケ: 洗濯機

数週間前に洗濯機が壊れた。

もとい。
数週間前に私は洗濯機を壊した。

バスタオル2枚を投入する際に1枚が内蓋にひっかかったのを
一度タオルを上に引っぱることで外そうと思い、
けれど、それに失敗して外しそこなったのと同時に、
「うまく外れるはず」との想定で放り込む動作はすでに強行されてしまい、
修正がきかなかったために(頭に体が即応できないのも「老い」よね、たぶん……)
内蓋のとりつけ部2箇所のうち片側が破損。

片側だけで使っているうちに、当たり前ながら
残っている一方に無理がかかって、そちらもやがて破損。

使うたびに手作業で内蓋をきっちりはめてやれば
問題なく使えはするものの、やっぱり面倒くさい。

それに、うっかり嵌めそこなうと、
まるで火星人の軍団でも我が家に攻め入ってきたみたいな
異様な大音響が家中を震撼させることになる。

まだそんなに使っていない洗濯機だから
すぐに買い換えるのはもったいなくて踏ん切りはつかないのだけれど、

夫がシェーバーを買うというので一緒に御用達の家電のお店に出かけた際、
ついでに洗濯機を見るだけは見ておくことにした。

家電製品て、見るたびに、やたら目新しい機能が追加されていて、
そして目玉が飛び出るほど値段が吊り上がっていくのよね。

掃除機も炊飯器も、シンプルに1万も出せばお釣りが来てたのに、
なによ、このイチイチえばりくさった大仰な顔つきと能書きと値段は。

洗濯機だって……うげっ。
たかが洗濯機がなんでエアコン並みの値段なのよ……うへぇ。

それに、どれもこれもデカい気がするんだけど、
ウチの洗濯機の置き場所にちゃんと入るんだろうか……?

そこへお店の人がやってきて、
「今お使いの洗濯機はこちらの記録で分かりますので、
サイズはそれで確認できるかと」
「あ、そうですか。それは助かります」

メモ帳を構えて、
「今お使いの洗濯機はいつごろ買われたものですか?」
「たぶん、5、6年前だと思うんですけど」
「どこの製品だったでしょうか」
「……覚えてません」
「では当店の記録を調べてみますので
しばらくお待ちください」

ややあって戻ってきた男性は、驚くべきことを口にした。

「お買い上げいただいたのは2002年となっております」

げぇぇっ??

「そんなはずはありませんっ」と口走りそうだった。
だって、それって14年も前じゃない。そんなはずは……。

あの洗濯機が我が家にやってきた日のことは
結構くっきりと記憶にある。泡洗浄というヤツが目新しかったから。

くっきりと記憶にあるから、まだそんなに遠い日のことだとは思っていなかった。
でも、そう言われてみれば、案外くすんだ記憶のような気がしないでもない。

いや、言われてみれば確かに、かなり遠い日の記憶のようにも思えてきた。けど。

思えては、きた、けど、よ。

つい5,6年前だと感じられていた、あの「新しい洗濯機が我が家にやってきた日」が
なんと、はるか14年も前のことだったなんて……。そんな。そんな。

誰かに騙くらかされているみたいなボーゼン感で思考停止したまま、
資金調達のアテもないのに、ぼんやりと財布からカードを取り出し、
「おカネ使っている」感ゼロで、ぼや~と洗濯機をご購入。

その間、ボーゼンとしたまま
ずっと頭の中で繰り返されていたのは、

もしかしたら、コイツは
我が家にやってくる最後の洗濯機になるのかもしれない……。

だって、コイツがいずれ壊れるまで、アナザー14年とすると、
今年めでたく還暦を迎える我々夫婦はその時74歳……。

それまで生きていたとしても、
その14年間はまたも、本人の主観的には
「つい5、6年」のうちに過ぎ去っていく……。

つまり、「あっという間」に……。

ぐわあああああん。