海の自己決定 in 日常

重心における本人中心の意思決定とは何か……みたいなことを
2年前の重心学会や、昨年末のびわこ学園の実践報告会なんかで
エラソーに言わせてもらったんですけれど……。

それは案外に、とっくに療育園で娘の日常の中に
ちゃんと根付いているものでもあり。

以下、先週末の担当支援職の方が書いてくださった連絡ノートより。


今日のデイルーム当番はFさん。
そのため、夕食時にはFさんの好きなCDをかけます。

Fさんは当番の日はいつも自分のCDの中からかけたいものを持ってくるのですが、
だいたいキズだらけ。

なので、音楽は途中で止まり、またかかり、ガガガガッと変な音もします。

そのつど、「Fさ~ん、ちゃんと聴けるのにしてぇや~!」と職員が注文をつけ、
Fさんが「てへっ」と笑い。

今日もそういうやりとりです。

そこに、すかさず入ってくるのが、海さん。

近くに看護師のYさんがいたのですが、
Yさん:今日、自分が当番だと思っとるひとー!
海さん:はーい!! (めちゃくちゃ手を高く上げつつ)

あわよくば自分のCDをかけてもらえるのではないかと、
FさんのCDが止まるたびに声を上げるのです。

「ダメでーす。今日の当番はFさんでーす」と
支援職のKさんに言われても、あきらめない海さん。
どうしてもCDを聴きたい海さん。

「ごはんのあと、CDにする?」と私が聞くと、
「そーする!!」と言われたので……


夕食後、ベッドにて

私: 海さん、CDにする?
海: はーい!! ……でも、TVも気になる……。
私: TVでもいいよ。ベッド起こそうか?
海: はーい!!

ベッドを上げてから私は離れたのですが、
少しして見てみると、なんと横を向いて呼んでいるではないですか!!

私: TVを見るって、言ったじゃーん。
海: CDでーす!!
私: えー。……CDにする? おもちゃにする?
海: おもちゃー!
私: じゃぁ、ベッドを下げるよ。

と、ベッドを元に戻して、おもちゃを渡しました。

(母注:ここでいう「おもちゃ」とは、いわゆる「童謡絵本」です。
 曲のイメージの絵が描かれたボタンで好みの童謡を選んでかけられるもの。
 ボタンが並んだボードを絵本の本体から取り外したものを
海は片手に持ち、そっちの手や、もう一方の手指で押して鳴らして遊ぶことができます。
最後まで聞く前に他のボタンを押すので、うるさいことこのうえないのですが)

数分間は遊んでくれていましたが、
あれ? おもちゃの音が聞こえない……。聞こえるのは……。

海: はっはっはっ!!
私: めっちゃTV見よるじゃん!! おもちゃは? 握っとるだけじゃん!!
海: だって、アナウンサーが! おもしろくって!!

ま、いっか。
海さんはそのまま、おもちゃとTVを両方とも楽しまれ、


その後、寝る前のオムツ交換時

横を向いた姿勢でおもちゃを楽しむか、それとも上を向いたままTVを見るか、と
Kさん(支援職)に問われ、おもちゃを選んだ海さん。

そのまま眠れるよう、しっかりポジショニングをしてもらい、
おもちゃを楽しんでいました。

(母注:ポジショニングとは、自分で体を支えられないので
あちこちに専用クッションを置いて横向きや仰向けなどの姿勢をつくり、支えることです)

ところが、20:30ごろ

なんと、しっかり上を向いてTVを見て笑っている海さん!!
(ポジショニングなど、ものともせず……)

私が「ええーっ」と言うと、にやっと笑い、

私をそっちのけでTVを十分に楽しんだ後、
21:00まで、今度はおもちゃで楽しそうに遊んでおられました。